どうも、ゲタライド(@ridertwsibu)です。

いつでも嫌な方向にホットな話題ばかりの転売屋。
特に近年は新型コロナウィルスに便乗したマスク転売。チケット転売規制に逮捕者や、以前もヨドバシカメラの転売規制に関するいざこざなど規制ネタが熱いです。
むしろ私が注目している中で、これ程冷めて平和になって欲しいジャンルは他にないんですけどね。フィギュアーツの予約戦争は毎回心が病みそうになります……。

私はニート時代、ブラック企業と己の現実にガチで絶望して、ネットビジネスに手を出していた時期がありました。
そうです。あの与沢翼や高額塾などの詐欺で有名な、現在でもたまに見かけるネットの闇代表例みたいな扱いを受けている、あのネットビジネスです。

実際に20万円する高額塾にも入って、後にそれが家族バレして「あらやだこのクソニートカモられてる」と家族会議起こされたこともありました。
その頃にはもうネットビジネスについて理解できていたので、ノープランで入塾したわけでもなく収支で言えばプラスだったのですけど、それはまたの機会にお話しましょう。
(受講した内容も、単純に情報を売るだけのネズミ講みたいな内容ではございません。念のため)

で、そうした世界に浸かり込んでいた時期には、転売に関するセミナーもいくつか行きました。
ちなみに高額塾を売り込む前段階として、この手の無料セミナーを開くのは彼らの常套手段です。
こちらとしてはマジで知識がない時期は、無料の基礎セミナーだけでも結構勉強になります。
ちゃんとしたものを学べると思わせないと、誰もバックエンドの高額塾に入らず、そもそもセミナーやる意味ないですからね。

そして大抵のセミナーでは受講者同士で繋がりを持つことが推奨されます。
これはネットビジネスに限ったことではないのですが、情報共有できる仲間はとても重要です。
そういうわけで個人間で作ったコネクションからも情報を引き出していき、割とガチかつシビアな転売屋の裏側を覗き込んでいました。
今回はそうして得た知識を共有してみようと思った次第です。

せどりと転売の違いと批判される理由

せどりとは本来、仲介に立ち品物を取り次いで手数料を取る仕事のことを指す。
その語源は『糶取り』で、米を売りに出すことだったと言われており、そこから米の競い売りで『競取り』と呼ばれだした。

そこから転じて、現在使われている意味合いでのせどりは古本屋が由来だ。
古書店から価値ある本を抜き出して売る行為が増え、本の背表紙から『背取り』の字が当てられた。
背取りという言葉自体は1936年出版の『書物語辞典』で既に使われているので、もはやほぼ一般化した言葉と考えていいだろう。

価値ある本を引っこ抜いて売られるので、当時から嫌う書店もあった。
ただし稀覯本主体ではなく大量仕入れ大量販売形式の古書店では、一度に多くの在庫が掃けることから歓迎される場合もある。
(昨今では大量に本を抜いた後に相場を調べ、利益がないとわかると元の位置に戻さず放置する者がおり、個々のマナーを問題視するケースもある)

現代でのせどりは書店に限らない。家電、衣類、ゲーム、玩具など様々な分野にせどり屋は食い込んでいる。総合型仲介販売業がせどりなのだ。

ではもう一方の転売はどういう意味か。
転売も仲介による商品販売はせどりと同様だ。
しかし転売はその中でも商品を買い占めて売る行為を指す。
せどりという大きなジャンルの中に『転売』という方式があると考えればわかりやすい。

転売は需要があるとわかれば、普通に売られている商品を定価で大量に買い込む。
そうして市場が品薄になった状態で、高い値段を付けて売るのだ。
普通なら定価で買える商品を独占することで、市場価格を強引に引き上げる。
意図的な市場のコントロールが発生していることが、通常のせどりとは大きく異なる部分だ。

話が少し複雑化してきたのでシンプルにしよう。
大前提として仕事とは『人に役立つことをしてお金を貰う行為』だ。

転売屋は、元々普通に買えていた商品を買い占めて、利益上乗せして売る。
買う人は本来は払わなくていいお金を払う必要がある。
元の商品を売る人は、届けたい人に商品が届かなくなる。
転売行為は転売をする者しか得をしない。

こちら予約開始直後に大戦争が起きた『仮面ライダーオーズ タジャドルコンボ』の人気フィギュアーツ(フィギュアの一種)だ。
(フィギュアーツでも特に真骨彫製法はクオリティが高い人気シリーズでり、ほぼ毎回予約戦争状態ではあるが……)

この商品、定価は税込み8,250円だが転売屋達によってかなり高額化している。
買い手が付きやすい、予約品切れ直後のピーク時はもっと高くて二万円を余裕で越えていた
しかもネットでは予約開始から一分もあれば品切れを起こす。

開始一分持つなら開始と同時にアクセスすりゃいいじゃんとお思いのアナタは甘い。甘々……大甘だ。
予約の開始時間は夕方の16時で、普通のサラリーマンなら仕事中の時間。そもそも予約競争に参加すらできなかった人も大勢いる。

そして開始と共にアクセスしたとしても人が多過ぎて繋がらない。
「数分かけてやっと画面が表示できた……商品予約を……はい? もう終了してる……?」

これが現実……現実です!
仕事終わりと同時に職場を飛び出してショップに向かえど、一人一限のリアルショップすら二時間持たず売り切れ。ふざけるな! ふざけるな!

現実問題として多くの人が買えず、Twitterでは怨嗟の叫び響いていた。当然の如く私の声も混ざってた。

それにも拘わらず、Amazonにはバカみたいな値段でバカみたいな数の転売出品がある。
予約開始と同時に実店舗のショップを回り一人で複数の在庫を抱えているケースもあれば、同時にヤフオクやメルカリなどでも多数流れている。
どれだけ大量の商品が転売屋によってさらわれていったかわかるだろう。

せどりでは基本的に市場で高い価値のある商品を探して入手する。この行為は必ずしも悪いとは限らない。
少なくともその市場に対する目利きと探すための技術を要する。ある意味で時間と手間をかける職人芸だ。

一般的に書店間での売り買いが基本であるが、せどりは古い時期から、古書店間だけでなく書店と一般客の間に入る行為は存在していた。
コレクターや専門書・資料を求める人だと、度々その中に稀覯本が含まれる。

現在のようなネットはおろか、古本屋の大型チェーン店はほとんど無かった。それどころか交通網すら未発達だった時代。
古書店から価値ある本を探す難易度が現代の比じゃないのは、容易に想像できるだろう。

そこから望まれる本の所在を調査して仕入れ、望む者への橋渡し役となる。
本来入手の難しい本を探す時間と手間がお金となっているので、きちんと人に役立つ行為だ。

現代におけるせどりは悪なのか?

前章ではせどりの有用性を語った。
しかし時は流れて、現在だとネットや大量販売店舗の普及により、商品を探す行為自体の敷居が昔に比べて下がっている。
便利なった分、行為の価値も下がるのは客観的な事実だろう。

特にネットでは安値の商品を買い、値段を釣り上げてネットに再放流するケースも多々ある。
これも買い占めの観点から転売の一種と考えるべきだ。
(実際ネットで完結する転売は競争率がトップクラスに高く、平均して利益率も低いので難しい行為ではある)
これらの結果、転売という悪行が世に蔓延する下地にもなってしまった。

ならば、現代のせどりは今や悪徳行為なのか?
これについてはやり方次第であると私は考える。

ネットビジネスで知り合ったせどり屋の一人は、主にフリマ(当然ながらネットではなくリアル)で仕入れたパンプスをヤフオクやネットのフリマに出品している。
フリマでパンプスを売る人の多くは、もう使わなくなったものを、そのまま捨てるのは勿体ないから少しでもお金に変えたいって人が多い。
この手のファッション品は、買ったはいいがほとんど履いてないまま処分も多くあるらしい。

リアルフリマで状態の良いものを仕入れて丁寧に清掃して売る。安く仕入れて高く売るのは商売において基本中の基本だ。
ただこの方法だと自分の行ける範囲でフリマの開催日時や場所をおさえ、足げに通って見て回らなければならない。
言葉以上にかなり手間暇かかる作業だ。

話を聞くと清掃作業や写真撮影にはすごい拘りがあり、購入者とのやり取りや梱包も丁寧。
売り手にとって取引評価は命であり、ここに手間を惜しむ人は絶対に稼げないとのことだった。

この辺りの力説っぷりも、私がせどりに手を出さなかった理由の一つだ。
この場合清掃は商品をより良くする付加価値の一つで、写真も写り方一つで見栄えが大きく変わる。

梱包についても、私もちょくちょく利用しているメルカリでは、未開封品のフィギュアに緩衝材のエアパッキンすら使わず発送する人はザラにいた。
これが転売目的じゃない人だとしても、買う側すれば評価は転売屋以下だ。
せどりや転売も客商売なので丁寧過ぎるくらいで丁度良い。元々が悪質な商法でもっても、雑なせどり・転売が生き残れる程甘くはないのだ。

またネットでよく言われるようなせどり屋のメリットは事実もある。
例えば東京の限定イベントで二千円グッズがあるとしよう。
それがネットで四千円で売られているのを見つけた場合、貴方はどう思うだろうか?

「二倍も吹っかけてるよ。だから転売屋は嫌い」

もしただ安直こう思ったのなら、それは都内に住んでいてイベント品を買うのに困ることがそんなにない人。もしくはその商品に対して、さして興味のない人の視点でしか考えていない。

例えば、イベント会場まで片道一万円以上かかる人ならばどうか。
場合によっては宿泊が必要なケースもあるだろう。
それが二千円で済むと考えれば、一概に高いとは言い切れない。

売る側視点だと、むしろ不利な想定がいくつも起こる。
まず根本的に差額の二千円が丸々利益になるわけではない。
移動費、出品手数料、販売手数料、税金や梱包材などの諸経費。場合によってはイベント参加費用もかかっている。

イベント限定グッズだと売る側も全員に行き渡るよう、一人あたりの購入数を制限していることも珍しくはない。
言うまでもないがイベント限定品を山程買うのはそれだけでマナー違反だ。販売数制限は厳しい程一商品あたりのコストが増えるので、転売屋対策として購入数制限は有用である。

要するに、売るまでにかかった費用全てを純益から差し引いて、かかった時間で割る。そこまでやって初めて割のいい仕事かどうかが判断できるだろう。
例えば二千円のうち移動の電車賃が五百円。加えて販売手数料や送料等を、わかりやすいよう合わせて五百円と仮定すると、純益は千円。
更に移動時間を含む仕入れと出品・客とのやり取り、梱包及び発送作業。諸々で二時間かかっていた場合、時給換算でたったの五百円だ。

これなら普通にバイトした方が断然効率は良い。
一見するとふっかけているように見えて、実はかなり良心的な価格だったなんてことすらある。
(実際にはもっと複雑なので、単純に料金だけを見て利益を割り出すのは難しく、上記の例はあくまで目安程度)

他にも古書店やリアルフリマにひっそりと眠る稀覯本を回収して市場価格でネットに放流するのなら、その商品を探していたコレクターの手に届く。
過去のせどり屋と行為の意味は同じなのだ。
しかも昨今は電子データの価値が向上して、紙書籍の書店は自然淘汰されつつもある。
そのまま回収されなければ、最悪希少な作品が誰の目にも留まらず処分されていく。

私が最近欲しい本も在庫がなくて、Amazonだとエグい値段になっている。もっと放流してくれていいのよ。

ここまで読んで中には「せどり屋って思ったより面倒くさいな」と思った人もいるかもしれない。
そう、真っ当なせどりは面倒くさいのだ。

転売による買い占めは商品を探す必要性が低く、売りに出すのもネットでいいから随分と楽になった。
そして利益を上げるため徒党を組んで限定グッズを買い占める。値段設定を極端に釣り上げる。等など人の役に立つという前提を捨て去った行為を選択するのが転売ヤー達なわけだ。

悪質とは言えないせどり屋や転売ヤー扱いされるもう一つの背景として、素人目線だとせどりと転売の見分けが付かないこともある。
例えば、こちらは前章で紹介したフィギュアーツシリーズの一つ。仮面ライダーオーマジオウのフィギュアだ。
一時期は定価の三倍以上になっていたため、オーマジオウも一時期、転売ヤーを非難する商品として扱われていた。

しかし根本的にオーマジオウが高騰した理由は転売が原因ではない。
オーズとオーマジオウの大きな違いは、オーズは店頭販売だがオーマジオウは受注販売である点だ。

店頭販売は予約開始と共に戦争が始まるが、受注販売だとよっぽど人気商品ではない限りそうはならない。
受注販売は最初から予約の数だけ商品を作って売る形式だ。
つまり転売ヤーによる買い占めは事実上発生せず、買い占められないなら転売の定義からも外れる。つまりはせどりの範疇だ。
(ただし二次発注以降になると入手が遅れるので普通に迷惑だよ!)

しかもこのオーマジオウは私も購入したので知っているのだが、一時受注が終わらないまま予約期間を終えた。
予約期間内ではそこまでの人気商品でもなかったため、欲しい人は全員定価でかつ通常の発送日で手に入る。

なおプレミアムバンダイはクレジットカード等での実質料金先払い方式なこともあり、売れる商品の見極めがないと利益がほぼない、もしくは赤字のケースもある。
せどり視点で考えてもリスクはある上、この段階では誰にも迷惑をかけていないのだ。

オーマジオウの人気が出たのはTV本編最終話での圧倒的な大活躍が発端だ。
しかし、その段階ではフィギュアの受注期間はとっくの昔に過ぎていた。

ここは純粋に受注販売の欠点で、予約タイミングを逃すと一気に入手難度が跳ね上がってしまう。
需要は高いのに供給は少ない状態になってプレミア価格が高騰した。

つまり市場価格の上昇も偶然が重なった結果によるもので、せどり屋は特に関わっていない。
むしろ「予約を逃したけど欲しい!」という者達が手に入れるには、最初から在庫確保して売る目的だった者達からの供給が大部分だ。

「売る目的で買うとかファンじゃない金儲け! 不正と同じくらい気分悪い!」と思うならこう考えてみよう。
逆にここでせどり屋がいなかったら? 他にはもう中古販売業者が同じく売るために仕入れるか、一般の人が何らかの事情で手放した場合しかない。
少なくとも前者の動機はせどり屋と同じなので、中古販売店も同じく悪質扱いにしなければ話が合わなくなる。
その上で市場に出回る商品が大幅に減り、価格の更なる高騰は免れず、その上で入手できる人の数も大幅に減ってしまう。

このケースだと、せどり屋が介在するメリットの一つ、貴重品の在庫確保が正しい意味で機能しているのだ。
こうなると、上記の感情論では『金儲け』行為そのものが悪になってしまう。

先に書いた通り、人に役立つことをしてお金を貰う行為には何の問題もない。
『金儲け=悪』だと考えてしまうのは、むしろ日本人特有の決めつけ的な悪癖ですらあり、問題のないせどり行為と転売の見分けが付けられない要因の一つにもなっている。

ただし、せどりだから全部問題がないのかと言えばそういうわけでもないのは実情だ。
今回のような受注生産だと一回の生産量には限度がある。それを超えると生産終了したり、二次や三次受注になってしまい発送が遅れてしまう。
どんな販売形式だろうが、需要と供給バランスを狂わせるレベルで介入されるのは普通に迷惑だ。

特に質が悪いせどり屋はこのシステム自体を悪用する。
例えば先に挙げたフギュアーツの受注生産品を予約して、支払い方式を代引き払いにする。
そこから売るのはフギュアーツそのものではなく商品の購入権利だ。

権利を買い取った者へ住所変更すれば、売る側は在庫を持たず、商品の発送すらする必要がない。
商品を注文し損ねたり、存在を知った頃にはもう発注期間が終わっていた者が商売相手だ。
更に二次発注以降になった場合、商品が早く欲しくて転売ヤーから買うケースもある。うん、そいつらが買い占めなかったら君も一次発注買えたかもしれないんだけどね!

それでも売れなければどうするか。
自分で買い取って、新たに商品を出品し直すならまだいい。
中には支払いを拒否して強制返品してしまう輩がいる。

例えば先に挙げたプレミアムバンダイでも、かつては代引き等の後払いでも商品購入は可能だった。
ところが悪質な一部のせどり屋達が商品予約後にネットで出品、そして商品が届くまでに売れなければ代金を支払わずに返品する行為が横行したためと言われている。
(一般客での返品率程度では代引き停止よりも、それによる売り上げダウンの方がダメージになるはずだ)

それに、せどりの行為とは基本的には中古販売店と同じであり、中古販売には古物商許可証が必要だ。
元々家にあるものを処分目的で売る場合は問題ない(古本屋に本を売る行為と同じのため)。
しかし『販売目的での購入』の場合だと、許可証を持たずにやるのは違法行為となる。

ちなみに古物商許可証の取得は別に難しいものではないので、ある程度安定した利益を出している人は普通に持っていても不思議はない。
せどり=無許可営業とは限らないので注意が必要だ。

結局のところ、古本屋で本を放置する行為と同じで、せどり屋というより個々の良識とマナーの問題になる。
金儲けが悪なのではない。人に迷惑かけてもいいから楽して稼ぎたいと考える思考が悪なのだ。

「定価で売れ」は転売屋への援護射撃になる可能性

過去にTwitterで見かけたのだけど、様々な言い訳を盾にする転売ヤーに「じゃあ何故定価で売れよ」と蹴りを入れるイラストがある。
『定価で売れ』は転売屋に対するカウンターとして、よく使われる言葉だ。

過去にセミナーの懇親会にて、転売で食べている人に実際に『定価で売れ』と言われることに対してどう思うか対策などを聞いてみた。
そこでの返答は「じゃあ買わなきゃいいだけだよね(笑)」だった。
残念ながら腹立つとかそういう感じではなく、嘲笑するようなニュアンスである。

残念ながら転売ヤーを嫌って『定価で売れ』や『不買運動』は実のところ大した効果がない

正確には全く意味がないわけでもないのだ。例えば転売ヤーに買い占められた限定グッズの再販が決定した等の情報をTwitterに流せば、再販を待つ人が出るだろう。
そういう対策としての意味は確かにある。決して転売ヤーを止める努力をする人達を否定したいわけではない。

けれど、この手の情報を拾えるのはTwitterで情報収集をしている人だけ。
そもそもTwitterなどのSNSで自分から積極的に情報を取り込むのは情報リテラシーの強い人達である。

新型コロナの影響で、トイレットペーパーが無くなるというデマが流れて、それを信じた人達と転売ヤーによって現実に売り切れ騒ぎが起きた。
それでもSNSを活用している人達は、デマを真に受けたという理由ではトイレットペーパーを買わないだろう。

他にも、最近見かけたネットニュースでもわかりやすい事例があった。
2020年のクリスマス商戦では、当然の如く『鬼滅の刃』関連の商品が人気になっている。
とある母親も子供達二人が『DX 日輪刀』を欲しがり買いに行ったが、どこも売り切れ! ネットでは高額転売が横行している。

それでも母親は転売に協力したくないという気持ちから、毎日行ける範囲のショップを回り、自転車で二十キロかけてようやく入荷を発見。
しかし商品はお一人様一つ限り……! 我が家の子供は二人……! 行き渡らぬ日輪刀……! 転売ヤー対策とはいえこれは無残! あまりに無残! ショックで崩れ落ちる母……!

結局、もう一つの在庫確保を求めてまた自転車で走り回ることに。
その姿を目撃した彼女の父親が「俺も手伝う」と援軍になった。
しかし、これが更なる悲劇を巻き起こす。

母親の父親、つまり祖父である。
情報に疎い世代であるおじいちゃんは、最近ハマったフリマアプリで『DX 日輪刀』を見つけてあっさり購入。
この状況では、フリマに流れてる時点で百パーセント転売ヤー確定と言っても過言ではない。当然の如く料金も大幅に割り増しされていた。

祖父は商品の定価と、そして転売ヤーの存在を知らなかったのだ。
何のためにうん十キロもかけて走り回ったのか……その母の努力は一瞬にして水泡と化して、父との仲も一時険悪になったのだった。

酷い話だがこれこそ現実。
『買い物=Amazon or メルカリ』でただ検索して欲しい商品を購入するだけの人や、使ってもせいぜいがGoogle検索で上位の情報だけで決める人。
いくらSNSで呼びかけても、こういった人達に「転売ヤーから買わないで!」の言葉は届かない。
転売ヤーのターゲットは情報リテラシーの低い層なのである。

ポッと出てすぐ消えていく者も多い業界だけど、長く生き残っている転売ヤーは決して馬鹿ではない。
情報強者が転売品に手を出す可能性が低いことは、最初から承知の上で売っている。
なので情報強者達が集まるところでの呼びかけは、実質あまりダメージにならない。

むしろ転売ヤーにとっては『嫌なら買わなければいい』や『買いたい人だけ買えばいい』という自己を正当化する理由になってしまう。
元々転売というシステム自体は合法のため、上記の二つは理屈の上では正論である。
チケット転売など明確に禁止されているものは別にして、ルールの上で成り立つシステムを否定するのは非常に難しい。

誰も転売ヤーから買わないは確かに理想だけれど、誰かは買うから転売ヤーは今も成立しているのだ。
あの手のイラストは現実的に『見た人が一瞬スカっとできる』以上の意味は持たない。とても残念ながら。

オタクの転売ヤーは多いという悲しい現実

京都ヨドバシカメラでは昔から、人気で入荷数の少ない高級ホビーは転売ヤーが群がりやすい。
その対策として、商品名を言えずスマホなどでも画像指定できない人に予約をさせないという対処を実施した。
これは中国人の転売ヤー対策として実際に一定の効果を上げた。大変ありがたいショップ側の努力の成果である。
この時の商品はエヴァ2号機のフィギュアだった。

ちなみに転売ヤーのよくある言い訳『早めに多く買うのでメーカーは助かる』というのは間違いだ。
今回のニュースで出たような大人向けの高級ホビーは一度に作れる生産数に限りがある。

しかも生産側が需要ありとして供給を上げると、それだけ転売ヤーは利益が減り、旨みがないとして手を引き出す。
そうしたら純粋な客は喜ぶかもしれないが、今度は在庫が余ってしまう。
こういうことされると、生産側はむしろ正確な必要数の把握が困難になって結果的に数を出しにくい。
転売ヤーが絡むせいで売る方も買う方も困るのだ。

Twitterでは一時期、この対策案に乗っかって『予約したい製品のストーリーや主人公の名前などを言えない者は、予約できないようにしよう』みたいな話がでていた。
(途中からネタや大喜利状態だったけど)
転売ヤーはお金目当てなので自分の売る商品に興味がないという前提で、より精度上げて原作の情報すらわからない層をふるいにかける考え方だ。
ただし、これはこれで欠陥がある。

いやまあ、この手の情報ならば検索すればいくらでもカンペは用意できるとかそういうのもあるけれど、もっと根本的な部分だ。
そもそも商品知識のあるオタクの転売ヤーなら普通に解答する。知らない作品でもジャンルが近いなら他より習得は容易だ。
具体的な割合まではわからないが、理論的に考えてオタク転売ヤーはかなり多いのだ。

なんせオタク玩具をメインにした転売セミナーとかもあり、実際私も行ってみた。
ええもうほとんどがガチオタの集まり。解説を聞いていても多種多様なアニメネタが出てきて、普通に一番楽しいセミナーだったともさ。
オタク向け商品を扱った転売セミナー開いたらオタクばっかになるぐらいには、オタクの転売ヤーは多い。

アニメやマンガのグッズに囲まれて仕事がしたいと思っている人が玩具屋を開いたとして、そこには何の疑問もない。
同じように、副業するのなら自分の趣味と被るものがいいとオタクグッズの転売に行き当たる。
趣味ジャンルを取り扱う方がモチベーションも保ちやすく、目利きだって知らないジャンルよりはずっと飲み込みも早い。
他人に迷惑をかけることを容認する部分以外は、間違った考え方ではない。

しかもオタクグッズなどの嗜好品はプレミア価格が付いて、売れる商品が多い市場でもある。
オタク街における中古ショップの多さからもこれは明らか。オタク転売ヤーが量産される土壌は十分に整っているのだ。

ちなみにオタク転売ヤーはオタク以外に商品を仕入れられたり、転売市場を荒らされたりするのを嫌う。
これも懇親会での話を聞いたことだけど、自分達アニメ好き転売ヤーのためにある市場だと選民思想を抱いている者もいた。と言うかその場にいた人達は割と賛同していた。
お酒が入っているのと、基本転売に対して好意的な空間のため皆本音をポロポロ話してくれる。そういう意味でも懇親会は便利である。

ある種の連帯感も手伝って、趣味が合うジャンルだと仲間を作りやすい。
徒党を組んで情報を共有して、商品を一気に掻っさらう方法も聞いた。
プレ値の付いた商品が再販されてる情報を得たら、メンバーで集まって平積みされているものを買い占めてしまう。

単価の高いレア物商品なら一人で狙う。
色々聞いた中の一人は、よく仕入先にしている中古ショップの店員と談笑して仲良くなっている。

趣味ジャンルだと元々詳しいから努力しなくても普通に話が合う。
オタク転売ヤーほど普通の購入客と見分けが付きにくい者はない。

店員からすればよく買いに来てくれる純粋な常連客のコレクターなので、新たに入荷した商品の情報なども積極的に教えてくれるそうだ。
見事なまでに善意が悪意に利用されている。これは酷い。

他にも色々真っ黒な仕入れ方法などの情報は聞いているのだけど、中には人の迷惑さえ顧みなければ誰でも簡単に実践可能なものもある。
今回の趣旨はそういうではないため、これ以上は伏せておく。

転売屋が多くて減らない理由と対処方法

転売屋は本当に数が多く、それが理由で辟易する人も多い。
せどりという行為は善でも悪でもない。
ネットを使えば人を社会的に殺せるが、それはネットというツールではなく使う者が悪いのと同じ理屈である。
では何故こうも悪質な転売ヤーが多いのか。

ネット転売最大の利点と問題は参入が容易であること。
他のネットビジネスといえば、代表的なものはアフィリエイトやYouTuberだ。

アフィリエイトは一見簡単そうに見えるがそんなものは幻想である。
ブログの構築。商品選定。キーワード選定。記事作成。
やるべきことは大量にあって、しかもうまく行ったとしても成果が出るまでは何ヶ月もかかる。

昔転売ヤー並に大流行したまとめブログですら、現実に稼げていたのはほんのごく一握りで、大部分は小遣い稼ぎにすらなっていない。
まとめブログが激減したのはGoogle検索の変化による部分が大きい。
つまり自分ではどうにもできない要素によって、アフィリエイトの成果は大きく左右されてしまう。

YouTuberも、昔に比べてシステムは進化したが難易度も大幅に上がり、今では収益化までたどり着くだけでも難しい。
芸能人や企業ぐるみの参入により求められるレベルも上がっており、Vtuberともなれば、まず準備に費用と時間がかかる。

対して転売は、ヤフオクやメルカリの発達によって素人の商品売買はむしろ容易になった。
Amazonですら、簡単に登録して個人で出品ができてしまう。昔に比べて敷居はかなり低い。

また、数年前に流行した情報商材の効果も、実は大きいと思われる。
情報商材は単なるネズミ講と思っている人も多いが、それは問題を単純化した結果生じた誤解だ。

情報商材の本質は、ネットビジネスの手法を売ること。
その中でも転売は一つの選択肢として人気ジャンルだった。

ネットビジネスは怪しげという先入観があるものの、せどり・転売は実態が知れているため手が出しやすいのも要因の一つだろう。
売りやすい商品を安く買って売るというプロセス上、ネットビジネスの中でも転売は確実性が高く利益が出やすいことで知られている。
根本的にネットビジネスへ手を出すのは、手軽に、そしてできるだけ楽に稼ぎたい人が多い。故に一見条件と見合う転売は手を付けやすいジャンルだ。

だが転売屋人口の増加は、転売ヤー達にとっても喜ばしい話ではない。
先に解説したように転売ヤーは徒党を組むこともあるが、基本的には一匹もしくは一グループずつ孤立した生き物だ。

一般人は転売ヤーとひと括りにしがちだが、奴らは奴らで敵同士なのだ。
この界隈、表で楽に掬える程度の浅い情報だと対して役に立たないか、酷い時は嘘まである。足の引っ張り合いだ。

まさに転売天国! ……なように見えるのは外側からだけの話。
転売ヤーにとって理想的なシチュエーションは、購入できない難民が多く、かつ転売の競合相手が少ない状態である。
だが現実だと難民は多いが競合も多い

真っ当なせどりの順路、自分の足で仕入先やルートを開拓して、目利きで商品を探して売るの流れは、ネットビジネスで楽して稼ぎたいと考える人達の思想と合わない。
そういう人達は、まず安直に仕入れも全部ネット上で済まそうと考える。
メルカリやヤフオクで仕入れて再出品するのもこの手の輩だ。

ヤフオクの落札価格とAmazonマーケットプレイスの出品を比較しても、Amazonの方が比較的高いことは割とある。
けれどそこから販売手数料やら何やらを差っ引くと、実際は多くがほぼ利益なしかマイナスになることが多い。

ヤフオクやメルカリでも手数料は取られて、ショップや商品によっては送料も購入者負担のケースもある。そのため、まともに仕入れるよりも値段は上がるのだ。

結局楽したい人達の思考は安直で、行き着く先も皆同じ。
参入は簡単でも売れる商品は数が変わらない。スキルの伴わない転売ヤーとは誰でも見つけられる商品しか狙えないため、結局は限られたパイの奪い合いなのだ。

そうなると次に狙うのは先程説明した予約買い占め。
こちらも同じく、狙われ過ぎて転売ヤーすら在庫確保は容易じゃない。

中には品薄になるとわかっている商品や、品薄になりつつあり予約すると美味しい情報をあえて積極的に流して、アフィリエイトで稼ごうとする者もいる。ゴールドラッシュのツルハシ売りかよ。
この手のサイトも転売を助長する厄介な代物だ。

競合が多いと売れにくくなり、市場価格は下がる。
そこへ在庫を抱えたまま再販がかかると、値崩れが起きて赤字による投げ売りが発生。
新型コロナ関係でマスク転売規制の検討が発表された時も、在庫を抱える恐怖から即投げ売りが始まった。
稼げると安易に手を出して、現実は中々売り抜けられず在庫を抱えるか赤字になる者が多い。

ここまでの説明を統合すると、転売とは参入がしやすく数も多いが生存競争も激しい地獄である。
専門用語だとレッドオーシャン。転売ヤーは一般人を巻き込みながら共喰いする蠱毒の壺なのだ。

この状況を変えるにはどうしたらいいかだけど、せどり自体は悪ではないという現実が邪魔をする。
安く買って高く売る行為とは商売の基本原則。これ自体を否定することはできない。
悲しいかな、悪質な転売ヤー達は法により守られている。

個々の努力は無意味だと言いたいわけではなく、一定の数値を越えたら、それはもう社会問題として捉えるべきだ。
転売ヤー界隈はあまりに煮詰まっていて、その段階に達している。

近年は新型コロナによるマスクや消毒液の買い占め、トイレットペーパーのデマ等によって、転売ヤーの存在はニュースにも取り上げられるようになった。
これにより今まで転売ヤーを知らなかった者達の一部が警戒を持つようになっている。売り手にとってはパイの減少だ。

同時に知名度の向上によって、フリマアプリを使用する人口も増えた。
これによって新規に入ってくる素人皆転売も増えたが、彼らは元手も大概は小遣いの範疇で、保有できる商品の数も少ない。
思考も単純で、赤字にならないよう売り出した商品をとにかく売り抜こうとする。

そうなると起こるのは価格競争だ。
中には善人が一人でも多く助けようと自分だけ定価で売り出すこともあるだろう。だがこれは実のところほとんど無意味。
定価だと商品確保のため監視している転売ヤーが即買って、再度転売価格で売り出すだけである。

しかし素人転売ヤーを出し抜こうとほんの少し下げるとどうなるか。
焦った他の素人転売ヤーも、赤字になる前に売り抜こうと価格を下げだす。
そうなると、相場単位の値崩れが生じる。
株価がちょっと下がると、皆が焦って急ぎ手放して大暴落する光景と似ているかもしれない。

つまり、転売ヤーでなくとも駆け引きより売り抜くことを目的とする者が増えると、自然に転売ヤーの打撃になる。
コロナ関連でおきた転売ヤーの周知、そして(転売ヤーでない者も含む)フリマアプリ利用者の増加は、転売に確かなダメージを与える一矢にはなった。

ただしこれで廃れて滅びるようなことはまずない。
仮に大部分が一度滅びても、残った少数が大儲けして、それを見た者達がまたわんさかやってきて元に戻ってしまう。

結論として、私はもうこれ個々の努力でどうこうできる段階をとっくに過ぎていると思う。
新卒の就活失敗や失業によって、国の完全失業率が三割を超えているとしたら、もはや失業者云々より国がどうにかしろよと考えるだろう。

現実でもマスクやチケット転売へ規制が入ったように、お国の奮闘に期待するしかない。
私が生きているうちに、転売ヤー達が敷き詰められた真っ赤な海ごとセメントで固められ、皆まとめて海底に沈んでいく様が見れたらいいなって……。