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仮面ライダーオーズ 復活のコアメダル いつかの明日は来るべきだったのか【評価・考察】

2022年3月20日

多くのファンが本作を受け止められない理由

多くのファンには、それぞれオーズの完結で望んでいた画というものがあるだろう。それと大きく食い違う人が、今回は特に多かった。

「再び映司とアンクが並び立っていつかの明日の明日を迎えるエンディングが観たかった」
「どうしてもっと明るい結末にならなかったのか」
「誰がここまで完結させろと言った」

総じて、火野映司が死ぬとは思ってなかった。これに尽きる。
TV本編ではアンクが死んだものの、映司が復活の希望を抱いて旅に出たので、明るい雰囲気で物語は幕を閉じた。

本作だと映司復活の芽は全く見えない。
この行き場のないドデカい感情は何処に持っていけばいいのですか?

物語が終わる覚悟は持っていたけど、そっちの覚悟はまたジャンル違いですやめてください。そんな感じだ。

もう一つの理由として、『なんでアンクが蘇ったのか、最後までよくわからなかった』というのがあるだろう。
理由はなんとなくわかるが、理屈がわからない。そりゃ理屈に沿った説明が全くないのだから当然だ。
アンクが『自分を甦らせたのは映司の願いだった』と悟るシーンが、このボヤっとした感覚のせいでいまいち感動しにくかった。

またそれ以上に、アンク復活の理由は映司の死とも関係がありそうだけど、その繋がりがハッキリ見えない。
なので映司が死んだ理由に納得できなかった視聴者も多いのではないだろうか。

こうなってしまったのは、『復活の理屈を書く尺がなかった』が大きいだろう。
なんせ古代の王が甦った理由すら完全に不明なのだ。説明の糸口すらない状態でバッサリ切っている。

前日譚である序章を見れば予想が確信に変わるレベルで意味合いは理解できる。
(それでも論理的な理屈はサッパリわからないのだが……)

切れる部分は切っていくことで、ようやく一時間の尺に収めたわけだ。
また、本作は(全部ではないが)基本的にアンク視点を基準に物語が進行するので、真相である映司視点は描きにくかったという理由もあるかもしれない。

序章を先に見ておけば、件のシーンはもっと素直に感動できたろうになぁと思うので非常に勿体ない。
しかし先に序章を観ようとすると、それはそれで映画本編のネタバレを食らう。
結局モヤモヤは抱える羽目になってしまうジレンマだ。

この『何でこうなった』という巨大な感情を作品を観ている内に処理できないことが、本作における最大の問題点と言える。
と言ってはみたものの、私個人で言えば映司の死自体は想定の範囲内ではあった。

クウガ以後の仮面ライダーシリーズには割と色々な法則性がある。
今回に関連するもので言えば二つだ。

一つ目は作品性。テレビ放映と劇場版(Vシネマ作品を除く)じゃなくなると、平成ライダー初期のハードな方向性に戻りやすい
TVや劇場版にかけられた枷が外れるためだろう。作品の趣旨によっても大きく変動するため必ずではないが、たとえごく最近の作品だろうと手加減がない。

[toggle title="一部他作品のネタバレが含まれるため、クリックで表示"]
アマゾンズ:
存在自体がハード。

ジオディケ:
二年前に放映した作品の続編なのに、主要キャラがバタバタ死ぬ。

ゼロワンアザーズ:
去年放映したばかりの作品の続編なのに、主要キャラがバタバタ死ぬ。

漫画版クウガ:
エログロに鬱展開のラッシュ。

小説版仮面ライダー:
内容が完全に大人向けだらけ。
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二つ目は、作品を完結させる時は取り返しの付かないイベントを起こす傾向にある
昨今のライダー作品はTV本編が終わっても冬映画やVシネマ、小説版と後日談要素が多く、作品単位だと続けやすい形で終わる。
そのため見落としがちだが、終わらせるつもりの仮面ライダーは、感覚的に「あ、これ先がもうないわ」って展開を用意しがちだ。

[toggle title="一部他作品のネタバレが含まれるため、クリックで表示"]
ファイズ:
主人公が死亡確定。

フォーゼ:
変身ベルトを溶鉱炉へIN。

ウィザード:
物語の核心部分に深く関わったメインヒロインが、主人公と他のヒロインの娘に転生。

アマゾンズ(シーズン2):
主役とメインヒロインが死亡。
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この法則に則ればオーズは相当にハードかつ、取り返しの付かない結末を迎える流れになるだろうことは容易に想像できた。
想像はできたが、やってほしくはなかったんだけどね!
というのも、オーズの本編は無欲で執着心を持たない仏のような人間である映司が、欲望の怪物と出会って、自らの巨大な欲望を自覚する。
そして最後には仏は人間に戻り、怪物は人間に成る物語だと思っていたからだ。

『何処までも届く腕で皆を守る』という自分一人では到底叶えられない巨大な欲望を、自己を捨て絶対的な力を得ることで手に入れた。
けれど本当に彼が望んでいた力は、自分一人ではなく、多くの人々と手を繫ぐことで得られるのだと悟った。

それなのに、映司はやっぱり自分の命を捨てて子供を守って死んでしまう。そこに迷いや後悔はない。仏はやはり仏だった。
最終回の結論は何処にいったんだよ! 「誰にも頼らないことは強いことじゃない」って伊達さんも言ってたでしょう!

勿論、理想と現実は別なのだけど、そこを繋げられるのが物語ってものだ。
言ってしまえば、映司が死ぬのは想定内なのだけど、死んだ理由が本編の結論を否定している。これが私の抱える解釈違いである。

とまあ、私が納得できない部分を書いたのだが、それでもやっぱり納得できている気持ちの方が大きい。
完結編を描くなら、どうしても映司は死ぬしかなかったという思いがあるからだ。

これは決して本編のテーマや結末を、ぶち壊しにも疎かにもしていない。
むしろしっかりと汲み取った結果、こうならざるを得なかった。

次に語っていくのは、仮面ライダーあるある的な法則的話ではなく、オーズそのものの作品性に根ざした理由である。

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