名義を変えろが人権侵害になる理由
はてさて、自称の方々によるマナーが単なるエセマナーであることは十分証明できた。
このエセマナーが炎上したのは、単に温泉むすめ関連だからというだけではない。唱えること自体がイラストレーターに対する『人権侵害』になりかねないためである。
SNSを眺めていた方々でも、人権侵害がパワーワード過ぎて色んな理屈が頭から飛んじゃう人も多いのではと思う。
私は朧気になって一回飛んだ。なので改めてこの理屈を整理する。
大前提として成年向けイラストの制作は犯罪行為ではない。
自称の方々の主張は、その手のイラスト制作をまるで反社会的な行為として扱っている。
これが大問題であり、やっていることはイラストレーターという職業に対する差別だ。
ちなみに、私は個人でイラスト発注などもちょくちょくやっているので実感として知っているが、女性でも成年向けイラストを手掛ける人は大勢いる。
自称方々の活動は女性の権利を守ることが目的としながら、同じ女性をも堂々と差別の対象としており、仕事の機会を奪おうとしているに等しい。
このように、実は女性の味方どころか敵になっているのもよく知られている特徴の一つだろう。
女性の味方を標榜しながら敵対しているのは、結局のところ自称の方々は『自分の主観』で物事を判断しているためだ。
『自分がこう思うからこれはダメ』と『女性は全員同じように考えているに違いない』が根拠になっている。むしろそれしかない。
多様性をガン無視するので、意見にそぐわない女性の存在は無視されてしまう。
単なるお気持ち表明で事実確認が欠落しているので、先に挙げたように唱えるマナーが現実とは乖離するような現象も起こるのだ。
そしてこれらのマナーについて、たとえ部分的にでも認めるのは非常に危険だ。
認めてしまうと、その理屈がどれだけ間違っていようが、その時点で『正しい』になってしまう。
常識や正しさというのは基本的にコンセンサスなので、そういう実績を与えるのは非常によろしくない。
また、非を認めたからと言って彼女(彼)らはそれで納得しない。
むしろこちらが正義だとして、次々と新たな要求を投げてくる。
『自分が正しくて相手が間違っているから、全部こちらの言う通りに相手が正すべきだ』となるためだ。
要求する度に『正しい自分』がどんどん肥大化していく。
だから矛を収めるどころか逆に要求はエスカレートするのだ。
これについては、めだかボックスにて黒神めだかが、とてもわかりやすい名言を残している。
悪い奴を差別する人間は 次に弱い奴を差別する
続いて愚かな奴を差別して 更に強い奴を差別する
そして最後に 自分自身を特別な存在 だと差別する
善意の中にある悪意
そういうのが嫌いなんだよ 私は出典:めだかボックス10巻 85箱
さて、ここまで結果として、自称の方々をボロカスに書いてきたわけだが、ここであえて話をひっくり返したい。
そう、あえてだ。
初めて自称の方々の主張を見た時ほんの少し「そうかもしれない……」と思った自分はいないだろうか?
多くの反論をみて安心した気持ちにならなかったろうか?
言わばこれは倫理面での罪悪感のようなもの。そして罪悪感があるということは、ほんのわずかでも彼女(彼)らに対する『共感』があるということだ。
もちろん無い人もいる。こういう議論に慣れている人程、自分の中にある理論武装がしっかりしているので、生じる疑問もなくなっていく。
だが、これはボクサーが殴られる瞬間に目を瞑らなくのと同じで、慣れによる部分も大きい。
けれど、そうでない人は何かしら引っかかるものがある。
この引っかかりを見ない振りするのも、どこか後ろめたく落ち着かない。だからスッキリするために考えてみよう。
あえてあちらの正しさを考えることで、この『共感』と何故現実が乖離しているのかを考察すると、世の中の見え方が少し変わってくる。
ただしこれは自称の方々を暗に認める結果にもならないとは先に書いておくし、だからこそ『ああ、そういうことか』という面白さになった。
これが今回、私が本当に語りたかった主題だ。
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