このページにはプロモーションが含まれています 仮面ライダー 感想・考察

仮面ライダー滅亡迅雷 正義は悪意を包括する【感想・考察】

2021年4月3日

スポンサーリンク

滅亡迅雷が掲げる聖戦の本質

人工知能と正義の話が楽しすぎて、滅亡迅雷.netの話が全然できてないぞ! ゼロワン考察になったら私はいっつもこうだよ!
そういう自覚はあるのだけど、滅亡迅雷.netが辿った結末は、この人工知能と正義論の上になり立つ話なのだから仕方ないと自分に言い訳して、最終章はガッツリ滅亡迅雷.netと仮面ライダーの話をしよう。

マスブレインは意見の統合による最適化を実行するシステムだ。
システム内部にいる者達の意見から最大規模の多数派が最適解として採用される。

正義の話をこちらにも適用すると、マスブレインシステムはソルド達が構成する『ソルド』クラスタだ。
そのため迅や滅亡迅雷.netがどれだけ異を唱えようとも却下されてしまう。同調圧力アタック!

人は周囲が異なる意見でスクラム組んでくると、弱い意見は押し潰されるか、少数派は少数派でより強く結束する。
学校で『オタク迫害の強いクラス』と『個人の自由としてオタク趣味を認めてくれるクラス』では、どちらがオタクグループはより密接に固まるかで考えればわかりやすい。

周囲がソルドで絶対受け入れられない意見で固められた滅亡迅雷.netは、より強く互いの絆を信じてまとまる。
そこでリオンはマスブレイン内に『ソルド』クラスタとは別に『滅亡迅雷』クラスタを生み出した。同調圧力による反発を別ベクトルで更に利用したのだ。これ本来は味方の逆転方法だよ!

マスブレインシステムにより繋がれた滅亡迅雷.netは、リオンの悪意に対して正義の怒りを燃やすとアークの悪意センサーに反応する。
滅が迅を殺された憎悪で反応するのだから、ヒューマギアが意図的に心を殺され兵士にされた義憤が、リオンに対する憎悪判定になるのは当然のこと。
しかもマスブレインによって繋がれ出力も四人分なので、滅がアークに取り込まれた時の比ではないと言ったのも単なるご都合主義だけではない。

話的にさらっと流されたが、マスブレインとアークがシステム的に統合されて一緒くたになっている理由にもきちんと説明が付く。
仮面ライダー滅亡迅雷を生み出すまでのプロセスは人(ヒューマギア)心を上手く掴み、滅亡迅雷.netに反撃の隙を与えなかった。エボルト並に悪辣で恐ろしい知能犯だ。

リオンがオーバーリアクションで胡散臭い演技で、かつ尺が短くて最後は残念な形で計画が崩れてしまったことが合わさり、実績よりも小物っぽく見えてしまうのが非常に勿体ない。
ラストでショッカーネタは面白いけど、これも小物感に拍車をかけてしまっている。だけど無ければ無いで話が重過ぎるため扱いに困る。

滅亡迅雷.netはマスブレインシステムによって戦えば暴走する。
多分これプトティラ以来のマジで制御不可能な暴走フォームになりそうなので、個人的にはワクワクが止まらない。
(ヘルライジングホッパーもそうだと言えるが出番が少なすぎた……)

ヒューマギアを守るため聖戦を起こすと、暴走によってアークと無関係な人間を傷付ける可能性が高い。
戦わなければ人間にヒューマギアが虐げられるのを黙認することになる。

亡を通して先にA.I.M.Sへ相談しろよってツッコミは、そもそもA.I.M.Sにそんな権限も権力もない描写がしっかりと描かれている。
下手に相談してしまうと却って暴走を危惧した人間側からの干渉を何かしら受けてしまう。
それならあくまで亡の独断にした方が動きやすくA.I.M.Sにかかる責任や負荷は減る。

ヒューマギアのお悩み相談室であり、ZAIAの利権に関われそうな或人は宇宙へ旅立った。新衛生キタ――!
元よりガッチリと主役不在を狙われている。

ここで滅を除く三人は聖戦を選ぶ。
迅は人間というより或人の思想を信じた。それが通用しない悪意があるなら徹底抗戦を選ぶ。

普段なら中立になりそうな亡だが、こっちはこっちで天津によって『ヒューマギアの自由意志を奪う奴絶対許さねえ!』になっているため、今回はむしろ好戦的な状況になっている。
だからこそ普段は、ヒューマギアの尊厳を重視する唯阿と相性がいいのだが、今回は裏目に出てしまった。

雷は必殺ワードの兄弟を出されると弱い。弟達を救いたい迅の意志を尊重するのも不思議はない。

或人から悪意が悪意を呼ぶ愚かしさを学んだ滅だけが、迅の意志を理解しつつも聖戦に反対した。
TV本編の終盤と真逆の構図になっているのが何気に面白い。
ヒューマギア系バンドがシンギュラリティ性の違いにより分裂だ!

迷う滅は森の賢者による『問題は力でぶっ壊して解決』系のパワー理論により覚悟を決めた。
いざ聖戦。四人は自分達の意志で心を一つにして仮面ライダー滅亡迅雷と成ったのだ。

作品内で『聖戦』を安っぽく連呼し過ぎと言う人もいるが、聖戦とは終盤になると仮面ライダー滅亡迅雷の比喩表現であると推察できる。
聖戦とは大義名分であり、一度始めてしまうと何もかもを破壊し尽くしてしまう。戦争の悲惨さを示す言葉になっていく。

『仮面ライダービルド』ではTVで戦争をマイルドに表現するため代表戦の形式を生み出したが、本作ではこの逆をやっている。
滅亡迅雷.netはヒューマギアの自由を象徴する組織でありながら規模はかなり小さく、自分達の戦いを聖戦と呼んでもどこか安っぽく聞こえてしまう。

だが、彼らが始めた聖戦はヒューマギアを解放して、敵将リオンの命を奪い、日本支社を丸ごと壊滅させた。
逆にマスブレインで縛られていたヒューマギアにはユートピアとして自由を与える。
ZAIAでもなく脅威にならなかった不破もあえて放置していることから、攻撃対象はしっかりと選別しているのも描いていた。

しかしながら滅亡迅雷は還るべき自分達の身まで滅ぼす。滅亡迅雷にとってはもはや聖戦を止める自分すらも敵なのだ。
まさに敵と見做したものは一切合切を破壊して滅亡させる。しかもそれを正義の行いとして実行するからこその聖戦。

今後、日本は滅亡迅雷を明確に敵として扱う。
リオンは滅亡迅雷をコントロールすることで敵を『必要悪』にして戦争を収益化しようとしていた。

だが、この計画は首謀者が消えたため完全に崩壊。とにかく倒せの方向性になり、滅亡迅雷はやがて日本、ひいては人類全てを敵と見做すようになるだろう。
現実の戦争でも破壊と殺戮は新たな敵を増やして戦火は広がっていく。

滅亡の狼煙がZAIA破壊という形で上がり、滅亡迅雷は悲痛な叫び声を上げる。
そして四人の顔と共に流れるエンディング。それはまさに彼らの心象そのものだ。

暴走する正義を止めるのはもう一つの正義。
ZAIAやヒューマギアを一切に信じない政府の高官は、仮面ライダーの出番だと告げた。

崩れ落ちたZAIAには拉致されている与多垣ウィリアムソンはおらず、天津の姿もなかった。
そもそも人の気配自体が感じられない。
あえて映さなかっただけか、それとも敵に回ると厄介だが味方になると有能な男が1000%の成果を出したのか。

不破はやることなすことシンプルだ。
滅との約束を果たすために動き、気に喰わないものをぶっ壊すだろう。

ならば、もう一人の唯阿はどうか?
彼女は正義を成すためでも、組織にいる以上は縛りが発生する。
事実、滅亡迅雷.netが宣戦布告しても上からの圧力で動けなかった。

その後に上役から来たのはヒューマギアを否定する心無い命令。
彼女はまた表情を殺して対応する。

けれど、もはや唯阿は道具じゃない。
ルールや組織の縛りからは逃れられなくとも、組織の中だから動かせるものがある。

縛りがないから不破は自由に動けるが、それ以上のことはできない。
不破の外に出た亡に自由意志を尊重できる場を与えたのは、唯阿の持つ立場と権限だ。

シンプルが故にわかりやすく力強いバルカン。
複雑さの上に成り立ち広くを守れるバルキリー。

二つの正義が、血を吐くように慟哭してSOSを発する滅亡迅雷.netの正義を受け止めようと、最後の戦いが始まる。

[cc id=2153]

人気記事

何故アメリカでゴジラが愛されるようになったのか【解説・考察】 1
2014年にハリウッドでギャレス版ゴジラが公開され、2021年には『ゴジラVSキングコング』が激闘を繰り広げました。 流石に注目度の高い人気作だけあって、様々な場所で様々なレビューが飛び交っています。 ...
【感想・考察】ゴジラ-1.0 王道を往くマイナスの本質とは 2
2016年、庵野秀明監督は懐かしくも革新的なゴジラを生み出した。 シン・ゴジラは純国産ゴジラとして、間違いなく新たなムーブメントを迎えた。 しかし、そこからゴジラの展開は途絶える。 新作はアニメ方面や ...
【仮面ライダーアギト 考察】伝説の続きが創った平成ライダーの基礎 3
ドゥドゥン! ドゥン! ドゥドゥン! アー! 令和の世で需要があるのかと思っていたクウガ考察でしたが、本編だけでなく小説版まで予想以上の反響をいただけました。 中にはブログを読み小説版を購入してくださ ...
仮面ライダーBLACK SUN 敗者達の希望と悪の連鎖【感想・考察】 4
第三章:敗者達による永遠の闘争の本質 黒い太陽が再び燃える物語 前章でも書いたが、BLACKSUNは光太郎と信彦の宿命の戦いを描いた物語だ。 それは間違いないのだが、二人の因縁は全編を通して意外と掘り ...
5
第四章:オタクの戦略的退化論 オタクは時間をかけて退化している 第四章の内容を後に回したのは、この記事において最も反発が大きいだろう部分だからである。 正直、これを最初に書いて煽るような炎上タイトルに ...

-仮面ライダー, 感想・考察
-, , ,