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仮面ライダー滅亡迅雷 正義は悪意を包括する【感想・考察】

2021年4月3日

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ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。

後日談のVシネマや動画サイトの続編配信がすっかり当たり前になった昨今。
本編終了から何年経っても新作があり得ることに喜ばれる一方、裏を返せば終わらなくなった問題も常に付きまとうようになりました。エボルトはいつ完全消滅しますか?(2021年3月現在)

特にゼロワンは本編の大団円を迎えながらも、イズの少ししんみりした終わりから、劇場版でアクロバティックな大団円を迎えて、かなりのやり切った感と『アズを使えばいつまでも続けられるぜ』感が両立していました。

アズとの決着や、滅亡迅雷.netが主体なら迅が何のヒューマギアなのかの伏線回収はあるだろうとの期待感はありました。

逆にやり切った部分で言うと、AIやラーニングが現在社会に与える影響、そして『心』についても十分に掘り下げています。
ヒューマギア以外の人工知能も劇場版でやったとなれば、後はテーマ部分で何をやるのだろう。
蛇足で善と悪の終わらないバトルはテーマとしてはややありきたり。似たような締め方は既に何度かやっていますし、畳む算段は立ってないけど、とりあえず続けられる伏線蒔いとこうみたいな締め方は個人的に好きじゃない。
かと言って劇場版のようなドラマを作り込むにはVシネマは尺が短さがネックになります。

期待と不安で言えば後者の方がちょっぴり高め。そんな心境で視聴に挑みましたが、結果は……劇場版に続いてまた想定外のアクロバティックをキメやがったよ!
劇場版はそれでも王道路線だったのが、本作はゼロワンらしさをそのままに新しい展開を作りました。

とはいえ今回は短い尺で複雑な話をしているのもあり、整理して考えないとボンヤリする部分があるのもまた事実。
なのでこれまでのゼロワン解説と考察と同様、人工知能やテーマ性に深く踏み込んだ切り口で語ってみたいと思います。

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ネタバレなし感想

本作の滅亡迅雷.netは主に三つの要素から話が作られている。

・伏せられていた迅の正体
・滅亡迅雷.netの組織としての絆
・個々の成長と変化

TV本編での滅亡迅雷.netは、組織としては少数精鋭で心の繋がった良いチームだ。
けれど個で見ると、そこには個々の意志があり、最後は組織よりも上に置かれる形で収まった。

亡と雷はそれぞれ自分の道を歩んでいる。そして滅と迅も互いの意志は理解し合っていても、そこにあるニュアンスは微妙に異なる。
その微妙な差異が冒頭から描かれ、それが後半へ進むにつれ言葉や行動になり表れていく。

滅と迅は同じく或人から『人類を滅ぼすべきではない』とラーニングしたが、それは一定の情報が入ったソフトをインストールして得たわけではない。

迅は或人がヒューマギアに夢を与えて、シンギュラリティによる自由を与える存在だと認識した。
滅は自分にはもはや心があることを自覚し、己の罪を認めて、憎しみの連鎖を断ち切った。

迅は『ヒューマギアの自由』を優先し、滅は『悪意の芽を摘み取り新たなアークを生み出させない』ことを目的として活動している。
それらを共通項として、滅亡迅雷.netはヒューマギアと人間が平和に暮らせる世界を願う組織として成り立つ。

この個々の意志と組織の意志を軸としてドラマが作られ、それが思いもしない結末へと繋がっていく。
この思いもしない部分に人工知能の要素が深く絡み、ゼロワンらしさも損なっていない。
ゼロワンらしさで言えば夏映画よりも出ているが、その分また『考える作品』にもなっている。

映像面では、全体的に演出がややスケールダウン気味の印象。ショボいって程ではないのだが、本編終盤や劇場版がスタイリッシュで格好良いCGを湯水の如く連発していたため、予算面の事情がそのまま画に反映されてしまったような印象だった。
いつもの文字演出も健在で、新しい形で面白い画を入れてる部分もある。ただそれも、演出そのものがちょっと控えめで地味な印象は否めない。

また、新演出は真面目なギャグみたいなものがちょくちょく入っている。
シリアスな流れで戦闘に入ってるのについ劇場から笑いが漏れてしまうノリで、シリアス色が強い話の中で清涼剤としても機能していた。
多分これは計算して入れているのだろうなぁと思う。

仮面ライダー滅亡迅雷はアクション面に触れるだけで大きなネタバレになるので後半でやるとしよう。
アクション面で個人的に一番オススメなのは仮面ライダーザイアだった。

私は元々サウザーのデザインがやたら好きで、ザイアについては真っ黒過ぎない? 黒は嫌いじゃないけどちょっと地味では? などと内心思っていた。
しかしながら、これが実際の画面で観ると思ったよりも違和感がない。

また、デザインはほぼサウザーでもアクションの方向性はかなり異なる。
ファイトスタイルにかなり躍動感があって、この動きなら金ピカより黒の方が合う。

これはもうアクターである中田氏の動きと、ジェイ・ウェスト氏の台詞がバッチリ噛み合っている。まさに名演技だ。
動きや台詞、演出まで含めるとザイアはザイアで、独立したの一人の仮面ライダーとしてキッチリ完成している。
短い尺の中でもかなりキャラが立っており、ぶっちゃけかなり好きになった。フィギュアーツ待ち(色変更は出しやすいの法則)。

ネタバレしない範囲で総括すると、本編同様に答えのないテーマ性を扱ったゼロワンらしいゼロワンの続編。
キャラの心情やテーマ性について深堀りしたい類の人は楽しめるシナリオとなっている。
(その分また尺がキツキツで、一部展開がテーマ性有り気でやや強引な面もあるが……)

演出面はTVの作り込んでいる時や劇場版に比べると派手さには欠けるものの、新ライダーの個性面はかなり際立っているため、動きなどは見ていて面白い。

『REAL×TIME』は良い映画観たなぁって気分だったが、『仮面ライダー滅亡迅雷』は「ゼロワンらしい続編を観た」って気分だった。

※ 以後はネタバレ前提の感想になります。

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