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ヘブンバーンズレッド Keyが歩む新たな伝説【評価・解説】

2022年7月30日

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『最上の、切なさ』を貴方と共に

TYPE-MOONよりも先に時代を築いたブランド

ヘブバンにおける大きな魅力は、Keyにて様々な名作を世に送り出してきた麻枝准による世界観とシナリオだ。
これを基盤に美麗なイラストや名曲達がゲームを形作っている。

スマホゲームとは思えない程にしっかりと世界観が練り込まれており、シナリオに対する比重がかなり重い。
こう言えばFGOのシナリオを想起する人も多いのではないだろうか。
実際、ヘブバンもその類型の一つである。

最もヘブバンの方が後続である分、フルボイスやCGの多様、3Dを駆使した繊細なキャラデザ再現など多岐の面で上回っているだろう。
しかし、重要なのはそこだけではない。

美少女ゲームとSFやファンタジーが調和したシナリオ性は、同ジャンルのTYPE-MOONよりも先んじて生み出された。
言わばTYPE-MOONはKeyの作品性を下地にして発展してきたメーカーである。

混沌としていた業界に明確な基礎を作り一時代を築いた。Keyは言わば時代の先駆者だ。
ヘブバンはその血統を正統に引き継いでいる。

本作は、公式からシナリオのネタバレは極力考慮するようお達しが出ているくらい、シナリオに対する熱量が高い。
世界観はハードなSFで、『終末が迫る世界で、最後の希望を託された少女たちの戦いと青春の物語』だ。

ヘブバンは最初から長編シナリオを前提として練り込まれており、キッチリ縦軸と横軸の物語が展開されていく。

そのうちの縦軸が、終末が迫る世界でのハードSFだ。
本作は最初からかなり多くの謎と伏線をばら撒いており、要所要所で含みを持たせる。

昨今のシナリオで好まれるのは『わかりやすさ』と『ストレスのない面白さ』だ。
実のところ、こういう謎を前提とした重厚な構成は、現在だとウケにくい。

しかし本作では謎がストレスにならないよう、後述する横軸側の面白さで補っている。
そしてKeyというブランド性から、多くの固定ファンが『絶対に面白い仕掛けがあるに違いない』とSNS上で様々な考察合戦を繰り広げていた。

Twitterではリリース当初から暫くの間、ヘブバンで検索しようとすると『#ヘブバン考察』が候補に引っかかってくる程で、未だにこのタグは機能している。
それを見た新規ファンは、『そういうことか』と新たな楽しさを見出したり、自らもその輪に飛び込み自分なりの考察を書き込む。

最近四章が新規に公開されたが、三章終了時点で『続きはまだか!』『これ、こっからどうなるの!?』と、期待と待ちきれない悲鳴がそりゃもう上がりまくっていた。
ハーフアニバーサリーイベントでは、四章開始のPVが最大のゲーム告知だった程である。

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登場人物の個性を最大限に活かすドラマ構成

前章でも解説したが、登場キャラクターはスマホゲームでよくある『武器や歴史上の道具をモチーフに擬人化』などではない。
完全に新規で、独特な世界観を活かし切るためのキャラ作りが成されている。
そのクオリティの高さはイラスト面でも語った通りだ。

ヘブバンはただただ暗いだけの物語ではない。むしろ遊んでいてまず感じるのはシナリオの『楽しさ』だ。
登場する少女達は活き活きとして、自分の人生を謳歌している。

滅亡が迫る世界で、少女達の青春と戦いの時間が混ざり合う。この二面性はかなり強く重視されている。

ただし、あまりにSFとしてのリアリティを優先し過ぎると、現実感が乖離し過ぎてプレイヤーの共感性が損なわれてしまう。
それを防ぐためだと思うが、なるべく世界が窮地に陥る前の生活を維持できるような状況が設定されている。
そのためガッチガチの軍事モノとはまた大きく異なっており、日常感は艦娘などよりも現実の感覚に近い(ヘブバンの舞台は現代水準)。

これのおかげで、会話のやり取りのバラエティを確保して、キャラクター達の個性も引き立つ。
少女達の青春と日常パートを確保するためには必須の要素だったろう。

あくまでミリタリーとしてのリアリティを求める人には不向きかもしれない。
物語としての着地点は青春と戦記モノの並立であり、コメディ有りシリアス有りの少女達による群像劇だ。

そのため、世界観は謎と厚みのある設定を縦軸として、横軸はキャラクター達を活かすために存在する『ルールのある箱庭』でもある。

スマホゲームなのである意味当然なのだが、ヘブバンはキャラクターの扱いを強く重視している。
キャラクター単位の立ち位置や役割をシナリオにしっかりと組み込み、それが群像劇となって一つの大きなドラマへと繋がっていく。
その性質上、ガチャは単純な性能よりも推しのために回す人も多い。

世界観はこのキャラ性を活かすための『箱庭』としても強く機能している。
これはゲームスタート地点のインストール時にも延々流れてくる情報なので解説するが、ヘブバンのキャラクター達は各部隊に分かれている。
例えば、主人公の月歌は31A部隊の部隊長だ。

この部隊は一つのチームであるが、ゲーム内ではそれぞれ異なるメンバーでパーティ編成ができる。
では何のための部隊かと言えば、アイドルに喩えれば『グループ』の概念に近い。
多分実際に遊んでいる人程「それな」となる感覚ではないだろうか。

31Aは六人(基本的に各部隊の人数は一律同じ)で編成されており、仲良し部隊もあれば不仲の部隊もある。
キャラ毎の関係性やカップリングもシナリオの中で描かれていく。

また、他の部隊も各章毎にピックアップされて登場する。
各部隊にはそれぞれに特徴があり、部隊特有のノリも物語を構成する上で重要な要素だ。

メンバー間、そして部隊間での敵対や協調がドラマチックな展開を生み出す。
もちろんキャラ単位での掘り下げもある。

そのためプレイヤーはキャラ個別に推す人もいれば、『31A箱推し』等で部隊丸ごとを推し対象にしている人も珍しくない。
私もキャラ個別の推しと部隊推しはそれぞれにある。

各章やイベントでどの部隊やキャラが活躍するのか。皆、自分の推しはいつ活躍するのかをワクワクしながら待っている。
むしろシナリオやイベントで活躍することで推しが増えるパターンも多い。
イベント開始時では回す気がなかったのに、シナリオをクリアしたら我慢できず回す。シナリオが優秀なゲームではお約束の現象だ!

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美少女ゲームの衰退とその後継者としてのヘブバン

Keyは、PCゲーム界では今でも有名なノベルゲームメーカーだ。
かつてはオタクの最先端コンテンツでもあったノベルゲームが衰退した原因は、シナリオと文章のボリュームにある。

小説と違いイラストやボイス、音楽等が付いているとはいえ、延々と文章を読み続けることが前提だ。
またシナリオが秀逸なノベルゲームである程、物語は複雑化して長くなってしまう。

サクッと読めるライトノベルの流行、それを更に嚙み砕いたようななろう系。
そしてテレビアニメの本数増加、動画配信などによって『より手軽に楽しめるコンテンツ』が増えていき、ノベルゲームは敷居が高くなってしまった。

そうしたノベルゲームの欠点を、ヘブバンはスマホゲームという形で吸収・発展させることに成功した。

Key作品における魅力的な要素だったキャラクター同士の掛け合いは、スマホゲームの形式に落とし込まれたことで、より軽快にテンポよく進む。
序盤は世界観の説明などが多く入らざるを得ないが、それもキャラクター達の愉快、時にトンチキな会話劇と共に進行するのでストレスにならない。

なるほど、こういうテンポと楽しさで話を回して、時々シリアスな話で盛り上げるタイプか。
一章の序盤を過ぎ去る頃にはそう理解していた。
しかし、ここからが本作の真骨頂だった。

テンポよく進みつつ時折入る何処か不穏な空気感や、恐らくは意図して微かな違和感を抱かせる伏線。
それらが蓄積されていき、決戦シーンが近付くにつれ一本の線として繋がり、クライマックスで爆発する。

物語の緩急がとにかく上手い。
ストレスを感じさせない楽しいゲームは、気が付けば魂を震わせる傑作という真の姿を表していた。

ちなみに私は、ゲーム開始当初は数分に一回は笑っていたのに、一章が終わる頃にはボロボロ泣いていた。
Keyが持つ高いシナリオ性と、スマホゲームのキャラ重視なゲーム性が見事に調和している。

メインシナリオは作中一のフリーダム少女、茅森月歌の視点で様々なキャラと関りを持っていく。
彼女がグイグイ話を引っ張りながら、基本ロックでけれどしっかりと自分なりの生き方を貫こうとする生き様と、それに関わっていく者達が必死に『活きる』物語だ。

月歌に関わる他のキャラクター達ももちろん魅力的で、彼女が箱庭を歩き回る目となった後、イベントでは個別のキャラクターが重視されていく。
つまるところ、イベントになると主人公の月歌すらほぼいなくなって、個別のキャラや部隊を焦点に当てた物語になるパターンも多い。
なんだったら本編で散々泣いた後に、イベントで主人公外の視点からのサイドストーリーを入れてくる。鬼か。

ちなみに、ストーリー性重視の徹底性はガチャにも影響を与えてくる。
普通はシナリオ開始と共に、新ガチャでメインになるキャラをピックアップするケースが大多数だ。

しかしヘブバンはメインシナリオ開始時点では、活躍するキャラを(少なくとも全員は)あえてピックアップしない。
始まったばかりの第四章でもこれは同様で、現在ピックアップされているのは過去イベントで活躍したキャラであり、今回活躍することはまずないとわかっている。

先にピックアップしたら、誰が活躍するのかわかってしまうではないか。
プレイヤーは本当にリアルタイムで物語を進めることでしか、どの部隊がクローズアップされて、誰がどんなドラマを繰り広げるかがわからない。

こいつ、集金性よりシナリオを選びやがった……!
その後のイベントによるサイドストーリーで、ようやくメインシナリオで活躍したキャラが登場する。
この仕組みによってプレイヤーはもう一度(シナリオで)泣かされた後、安心してガチャを回せるのだ。

イベント終わったら後続がプレイできない問題は、過去イベントがプレイできるアイテム(無課金で獲得可能)があるので問題はない。

一章単位(横軸)の破壊力も凄いが、徐々に謎が解明されていくことで見える世界の真の姿(縦軸)が先への期待を強烈に煽る。
このKeyというブランドが持つポテンシャルを最大限にまで引き出した類稀なる構成力こそが、私の心を掴んで離さない何よりの理由なのだ。

Keyがヘブバンで掲げたものは『最上の、切なさを。』その看板に偽り無し。

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ノイズを減らして楽しむために

語りたいことは語った。やりきったぜ。
しかしヘブバンはゲームだ。その性質上、やはり実際にダウンロードして遊んでもらうのが最上だ。
なので、最後にできるだけスムーズにゲームを進めるために二つの事柄をまとめておく。

一つ目は言わずもがなリセマラだ。本ゲームにおいて、最初の戦力選定はそこそこ重要度が高い。
その辺自覚があるのだろう、本作は実質リセマラ用のリセット機能が付いている。

プロローグを進めるとSS確定のガチャイベントが発生する。
続けて、メニューからチケットとガチャ石が貰える。
SS確定+二十連がリセマラ対象だ。

リセット機能を使えばこの流れをおよそ三分程で繰り返せる。
ここでなるべく属性(斬・突・打)の異なるキャラを入手しておくと後が戦いやすい。

また、それとは別に月歌のSSレア(斬)が貰える。
(流石に無料枠なので他のSSが育ってくると少々力不足にはなるが、序盤ではかなり有用な戦力だ)

理想を言えばここで月歌を含めてSSを四人以上。
できれば三人以上は獲得しておきたい。
(なお、リセマラはめんどくさいので地道に揃えて育成する派の人は無理しなくていい)

レアの排出率は一般的なガチャと比べても低くはないので、何度か繰り返せば二十連でSSを引くのは難しくない。
二枚以上となると多少の根気はいると思うので、そこはリセマラガチ勢なら頑張ろうってところだろうか。

なお、以下のSSが出たなら多少妥協して引き上げてもいいかも。
・國見タマ(二種類あるがどちらも相当に便利なヒーラー)
・桜庭星羅(壊れ性能気味のバフ役)
・役割がブラスターのキャラ全般(対ボスで重要なキャラ達)

特にタマと星羅は半ば二大巨頭扱いされているぐらい別格だ。
ヘブバンは完全なソロゲームで、フレンドからキャラを借りる概念がないので、戦力は自前で揃えるが基本だ。

それともう一つ、やっておけば確実に得ができる機能として『招待機能』がある。
ゲーム開始時にフレンドコードを入力すればガチャ石1000個分が貰える機能だ。

十連の必要数が3000個。
序盤はとにかくSSの数を増やして戦力を整えることが大事なので、貰えるものは貰っておこう。

ホーム画面右下にある『友達紹介』を押すと『友達コード入力』が出てくる。
当然の如く誘った側も石が貰えるのだが、招待側はそれなりに条件が厳しい鬼仕様。

誘ってくれるお友達がいなかったら、私のコードを使って貰えると嬉しい。とても嬉しい。
(本格的に友達が少ない孤独なブロガー)

コード:
j7kgrco5fg893agv

また、上記とは別に、今ならハーフアニバーサリーイベントで、毎日ログインするだけでSS確定チケットが貰える。これは本当に美味しい。ベースト・タイミーング!

最後の宣伝で記事の説得力が激落ちしたわけだが、正直なところ現時点で私の目的は既に果たされているので、気持ちとしては既に満足だ。
ていうか石欲しさに書いてるなら、冒頭の葉鍵解説とかいらないにも程がある。この長文記事で最後まで辿り着く読者、全体の何割だよ……。
(「頑張って書いたな。お前の記事を読んで始めた証ついでに石をくれてやるよ」って心優しい方が一人くらいいたら嬉しいなの感覚)

冒頭でも書いたように、Keyという一時代を築いたブランドと、オタクの歴史で果たしたその功績を知っておいてほしかった。
多量の情報に押し流されていくこの時代だからこそ、完全に風化してしまう前に継承しておきたいと思った。

そして、Keyはただ伝説として歴史の中で徐々に薄れ消えていくのではなく、新たな一歩を刻んだ。
時代と共に吹くその熱風を、一人でも多くの人に感じてほしい。

私の得た感動と体験を誰かに共有してもらえたなら、一物書きとして、私は私の役目を果たせたと胸を張れるから。

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