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ゴジラS.P アニメならではの現実観が生んだ怪作【感想・考察】

2021年5月18日

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シンギュラ・ポイントの鍵はペロ2と焦らしプレイ

何故ペロ2の解説を後に回したのかと言われると、そりゃアナタ、さっきの話で締めたらゴジラS.Pをなろう系扱いしたディスり記事との罵声を浴びるからである。
場末のブログでもその手のクソリプならぬクソコメは来るのだ。
そもそも私はゴジラS.Pをかなり楽しんで観ている派であるので、あまりディスりで話を閉じたくないというのも大きい。

サイトのURLにぶち込まれているくらい私は仮面ライダー好き好き大好き愛してる系のヒューマンだ。
そんな私にとってシンギュラと言われて真っ先に思い浮かぶのは、新時代の幕を開けたら次の年に堂々と平成33年宣言された事案の被害者側。つまり『ゼロワン』である。

ゼロワンと言えばAI・ゴリラ・社長のメダルで形成されているコンボ作品だが、今回重要なのはAIだ。
さっきユン×銘のシンギュラ・ポイント(はぁと)などと申したが、本来シンギュラリティはそういう同人的な意味ではなくAIに関する用語である。

AIが人類の知能を越える転換期がシンギュラリティであり、その意味であるならシンギュラ・ポイントはAIが人類を超える地点を指す言葉となるだろう。

人類を越え得るAIとは何者であるかと言えば、現状だとユンが扱うユングと、銘の元で大活躍中のペロ2であると思われる。
(加えて他のダウンロードされたナラタケも関わる可能性はある)

ナラタケAIは恐らく開発者のユンが持つ傾向から、基本的に情報収集とラーニングに貪欲だ。
ペロ2は銘のアシストをすることで人間染みた挙動と言動を強めていく。

それだけでなくペロ2が新たなボディを得たように、ユングもまたジェットジャガーの思考プログラムとして組み込まれて『身体』を得た。
彼らはまさしく成長するAIなのだ。

そして、物語の冒頭のプロローグはこう語られていた。

これは僕が
これは私が
これは私たちが今より少し賢くなって
色んなことがわからなくなるまでのお話

出典:©2020 TOHO CO., LTD.

これは僕が
僕たちが
私が?
以前よりも人間らしく
人間のことが少し分かるようになるまでのお話

出典:©2020 TOHO CO., LTD.

このモノローグ台詞は字幕オンにすると『ペロペロたち』と表示される。
少なくとも『銘ちゃんprprし隊』ではないだろう。私は弓道女子か褐色料理ロリを以下略。

ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。

なお、この声にはペロ2とユングと思わしきもの(同声優さん)が含まれている。
『ペロペロたち』という意味は八話辺りから考察できそうだが、地上波の放送まで重要なネタバレは伏せておく。

ペロ2やユングはアーキタイプ・紅塵の事件に関わっていくことで、人間の感性を理解し、いずれは人智を超えた領域へと踏み出していく。
未来すら予知する実質無限のエネルギー。それを計算できるのは人ではなくAIの領域なのだ。

AIの計算や怪獣の一部を取り入れ、ジェットジャガーは段階的な進化を得ている。
面白いことにAIとゴジラの進化はどちらも並行して進行している。
何故ゴジラだけが勿体ぶったようにチラ見せしながら進化を重ねていくのか。制作意図としての理由は明確だ。

「地上波でゴジラアニメ作れ? ゴジラ一本でワンクールも話が持つかバカ!」

要約するとホントにこれである。

もしゴジラがロボット主体のアニメなら(作画カロリー等の一切を度外視しれば)いくらでもやりようがあった。
だが怪獣だとアクションに幅が狭い。「とりあえず町に乗りだしてお散歩しながら尻尾フリフリ、時々ちょっと火でも吹いちゃう」ぐらいしかない。

しかも今更熱線吐いてもあまりに『お約束』なので、感慨はあっても感動や驚きはあまりないだろう。
それこそシンゴジがやったような、「使徒かな?」と言いたくなる全く新しい放射描写が必要だ。

実際、ゴジラS.Pの熱線はかーなーり気合の入った素晴らしい描写だったが、演出が長い分だけ一話に何度も使うと間延びしてダレてしまう。
派手になればなる程、ここぞというタイミングで使うから盛り上がる。

怪獣同士の対決も、実のところバリエーションは少ない。飛ぶとか刺すとか体当たりとか、原始的な動きだけ。
それを毎週やってのプロレスバトルだと幅がなくて確実に飽きる。

アメリカ版の新しいゴジラだって、メイン怪獣の登場時は尻尾だけとか霧の中でちょっとだけ見える等で焦らしてくる。これも尺稼ぎであり、『水中で一瞬チラッ☆』『海からザバーンとワンショット♥』も要するに同じ焦らしによるゴジラ本格参戦までの尺稼ぎである。

なお、ゴジラS.Pでは最初の前座となったラドンさんだが、自分の作品ではデカいヤゴを前座召喚した。
これはラドンが高速で飛び回るだけでは尺が映画一本持ちませんと言う宣言でもある。
なお、そのヤゴの亜種がゴジラに付いていて、最終話でのご登場は流石に予想できなかったよ……。

アーキタイプを軸に一連の謎を追う行為もまた同様で、どうやって1クール持たせるかが根幹にあった。
そしてクライマックスで互いに進化してきたゴジラとジェットジャガーの対決へ辿り着く。結果有り気の逆算から物語は構成されていった。そのため当初はタイトルも別物だったらしい。

物語は小さな町に現れた『小さな怪獣』から始まった。

しかしラドンは大きさと数を増し、東京や各世界へと飛び回り紅塵をまき散らす。

そしてマンダ、アンギラスが現れ、ゴジラは東京へと到着。
紅の塵は怪獣達によって共により広くへと運ばれ世界を侵食していく。
他の怪獣達もそれぞれに人を狩り、暴れだした。地球はもはや、怪獣達が住まうために在る異界のようだ。
その最も濃く深い場所にいるのは怪獣の王。

人を守護するために生まれたジェットジャガーは形を変え、怪獣達と等しき武器を持ち、動きを進化させ、やがて自律する『個』を得るに至った。

侵略者 対 守護者

ゴジラ 対 ジェットジャガー

『最初に名付けられた名』の通りに、決戦への軌跡は刻まれていく。

【次ページ:届くメッセージと決戦の本質】

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