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世界観とストーリー展開のバランス感覚
あるべき緊迫感の欠如
本作は『ゲーム』としての側面では、第一シーズンをまるごと使って、かなりうまく世界観と雰囲気を構築したと思う。
しかし、ゲームに寄り過ぎているからこそリアルな生き残りゲームとは相性が悪く、その弊害も少なからず出ていた。
相性を悪くした最たる理由が『脱落=死』ではないことだ。これ一つで物語の緊張感はまるで別物になる。
脱落式のサバイバルゲームは、推しの死ぬかもしれないストレスと、窮地を乗り切り生き残ったカタルシスが肝要だ。
また、死は大きな衝撃になる反面、キャラクター個々にとっては最大の見せ場にもなる。
人気の高いデスゲーム『ダンガンロンパ』シリーズでも、最後まで生き残ったキャラより、途中で華々しく散ったキャラの方が高人気なのはよくある話だ。
第一話でいきなり仮面ライダーの消滅が発生するのは軽い衝撃ではあったものの、シローに何の思い入れもないので本当に軽かった。
スナック感覚で死ぬタイプの物語は、次々と容赦なく消されていくことで、デスゲームとしての無情感が強調される。
東映公式によって当初からメインキャラ脱落の可能性は周知されてきたが、『日常へ強制的に戻される脱落』という安全装置があるせいで、狙っていた緊張感はあまり機能していない。
むしろ現状では、盛り上がりを削ぎ落とすマイナス要因になっている。シロー消滅による当初の緊張感も、やはり安全装置によって半減されてしまった。
『ラスボスを倒してゲームクリア時は、優勝しなくても生還できる』だけならさして問題ない。
「願いこそ叶えられなかったが、生きてこのデスゲームから生還できた!」はプレイヤー視点ならある種の報酬だ。
道長(バッファ)のように、ライバルキャラとして優勝を諦めないスタンスならリトライに賭けられる。
一年通して放送するのが確定した番組で、玩具の売上も大変重要となれば、メインキャラクターとその愛着が必須なのは当然である。
ゲーム設定と相まって、特定のキャラクターを終盤まで生き残らせる要素があるのに違和感を持つ視聴者はあまりいない。
また、デザイアグランプリのルールと運営もかなりガバガバだ。
最初はゲーム内通貨だとゲームを左右するようなアイテムは買えないような説明だったが、次のステージではパートナーの交代券を売っていた。
プレイヤーによっては、ハズレバックルよりずっと重要アイテムになり得ると思う。
その交代券も、森魚(メリー)の時は全員を集めて実施したのに、道長は一人でこっそり抽選して森魚を出し抜いた。
個人間でプレイヤーを出し抜くのは有りだとしても、運営は一定の行動を起こさなければゲーム的に不公平が生じる。
また、ルールも都度説明になっているのが多過ぎる。ショップのパートナー交代権や怪我・病気での脱落等など、そういう大事な話は最初に言っておけ案件では?
ゲーム用の専用デバイスがあるのだから、『基本的なルールはこちらから確認できます』的な一言があるだけで大きく違う。
ショップの説明にしてもあるのは知っている上で、具体的に販売しているアイテムの確認や、リアルマネーによる課金を質問する流れにすれば違和感は減る。
次章も少しだけ絡んでしまうが、脱落者に与えられるペナルティも周知されていないため、ひたすら逃げ隠れての『安全な脱落』は可能だ。
(物語の表現上、実行する者は恐らくいないと思うが)ゲーム外でわざと怪我して骨折する等、死なない程度の重傷を負う等の逃げ道もある。
「メインキャラが本当に途中退場してしまうかもしれない……!」と思えるデスゲームのドキドキ要素は、もっと濃い目に残しておいて欲しかった。
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シナリオのパターン化と次シーズンへの上乗せ
二話前後編で一ステージをクリアしていく方式も、たしかに視聴視点でのメリットはあるものの、誰がどのタイミングで脱落するかの予想をかなり容易にしてしまっている。
ジャマトに倒されての退場も可能性としてはあるが、第二ステージ以後は確定でポイント脱落が発生する。
一ステージで二人以上の脱落は、物語的に残りのライダー数の調整上難しいことは明白で、ポイント脱落がメインになってしまう。
そして第一ステージではキャラクターに思い入れがないため、脱落しても視聴者のショックは薄い。
せっかく仮面ライダーのパターン化から脱却する試みはうまくいっていると思うのに、もっと小さい『仮面ライダーギーツ』という枠組でのパターン化が顕著になっている。
予定調和な脱落ゲームでは、生き残りゲームの『生き残り』部分が持つ旨味は、半分も活かされていないのが現状だ。
世界観と作風の構築は上手いと思うだけに、それらが足を引っ張りいまいちシナリオが盛り上がり切らなかったのは残念で仕方ない。
関連して、キャラクターの生死に関わるセンシティブな話をすると、確実に子供向け云々と言い出す人がいる。その見識は子供を甘く見過ぎだ。
シビアで重い展開の多い『鬼滅の刃』が子供に大人気の事実に鑑みて、白倉Pが反省した部分ですらある。そこから生まれたのがドンブラザーズだ。
外圧的にコンプラの締め付けは『仮面ライダー龍騎』の時代よりも厳しくなっており、如何ともしがたい部分はある。
それでも、仮面ライダーは重要キャラやレギュラーがバタバタ逝く前例は、すでにいくらでもある。
比較的近年でも、セイバー以外の作品は中々に容赦がなかった。
仮面ライダークウガは仮面ライダーを新生させたが、その理念は『子供向け』と『子供騙し』は違うから始まった。
だからこそ話の軽さに対して『子供向けだから~』を言い訳に使うのは間違いだと私は思う。
とはいえだ。序盤から複雑でハード過ぎる展開を繰り出してしまうと視聴者を振り落としてしまうのもまた事実である。
昨今のアニメならもはや終盤の展開であるが、一年スパンの仮面ライダーではまだ全体の二割程度しか消化していない。
最初の山場を終えて、むしろここからが本番なのだ。
『仮面ライダー鎧武』の時も、初期レギュラー以外の新たなライダーが登場した辺りから盛り上がりを見せた。武部Pのサバイバルゲーム系ストーリーは個人的には割とスロースターターとも思っている。
しかもデザグラの仕様上、一ゲームが終了すればまたリセットされて次の流れへと移行する。
今回の説明した世界観と謎や流れを引き継いで、物語にさまざまな要素を加えた次周が始まるのだ。
一周ごとにゲームとしてハードさと緊迫感が増していく。そういう積み重ねが可能であるため、次シーズンのデザグラには更なる盛り上がりを期待したい。
展開の予想を難しくする仕組みと、生き残りゲームとしての緊張感をどう持たせるかが、ここからの物語を盛り上げる重要な要素になるだろう。
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