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【感想・考察】仮面ライダーギーツの懐かしくも新しい令和ライダー世界

2022年12月4日

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ゲーム制を活かしたギーツ独自のサバイバル世界

ギーツが崩した定番のライダー設定

仮面ライダーギーツで最も強く感じるのは『懐かしさ』と『流行』の融合である。

再生産的な制作方式で凝り固まってきたパターンを崩しているのだが、その崩し方は斬新さよりもむしろ懐かしさを感じてしまう。
主役は久方ぶりの俺様系の天才肌。二重人格のような特殊タイプを除けば、前回の俺様系がディケイドなので、実に十三年ぶり。
それ以外だとカブトくらいしかいなことを踏まえると、これがどれだけ扱いにくく難しい要素なのかがよくわかる。

ライダーも銃がメイン武器だとウィザード以来なので、こちらも十年経っている。
というかウィザードですら剣も多様していたので、本当にメインが銃一色(劇中ではフォームチェンジも多様けど)で、ガンガタをやるのは完全にギーツが初となる。

アイテム面も従来に比べて独自性が強い。
変身ベルトはクウガとアギトのみがベルト単体で変身するタイプであり、龍騎以後は日常の中にあるアイテムで変身するスタイルが定番化した。
キバットは流石に日常では見かけないけれど、モデルは誰でも知っている蝙蝠のため親しみはある。

ギーツはバックルとIDコアの二つをベルトに装着して変身する形式だ。
バックルはともかく、IDコアって何?
言葉的に変身システムの中核を担うアイテムなのはわかる。けど明らかに日常にある物ではなく、デザイアドライバーのためにあつらえられたアイテムだ。

しかも変身だけならバックルは必要なしで、エントリーフォームになれる。
(何気にエントリーフォームの何もない真っ黒感は、龍騎のブランクを思い起こさせる)
バックルはフォームチェンジ用の付属パーツの位置付けと言えるだろう。

つまりギーツは二十年以上続いた伝統の破壊に成功したのだ。
何気に快挙だと思うのだが、バックルのイメージが強過ぎてこの事実に気付いている人は多分あまりいない。

こうした定石崩しは根幹の世界観面でも見て取れる。
W以後のライダーは、二つの要素を組み合わせて物語の根幹を形作ってきた。
ゼロワンなら『AI+社長』、セイバーは『剣+物語(本)』、リバイスは『家族+悪魔』といった具合だ。

なお、この二つの要素で世界観を作る手法は、ジオウ時点で白倉Pは難色を示していた。
ただジオウのコンセプト自体が平成ライダーの集大成であったため、あえてそのまま起用したそうだ。

これをギーツに当てはめると『仮面+生き残りゲーム』になるだろう。

仮面は本作のデザインコンセプトであり、白い狐のお面がギーツの基礎デザインになった理由でもある。
(連鎖的に他のライダーも動物モチーフのマスクで統一されている)

ただ、他のライダーと違って、仮面のコンセプトは世界観と物語にほぼ影響を与えていない。
そもそも仮面は全ライダー作品共通のパーツであり、そこだけ抜き出して「今回の仮面ライダーは仮面がコンセプトなので全員仮面を付けてます!」と言っても、「何を言ってるんだこいつは……」って話だ。

つまり、本作は実質生き残りゲーム一本で勝負をかけているのだ。

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子供も視点を持ちつつ大人も親しみやすい世界観構成

また世界観も、生き残りゲーム一つを軸に作り込まれている。
やはり仮面ライダーギーツの魅力を語るには、本作独自の世界観を語らずにはいられない。

仮面ライダーギーツの独自性は、令和ライダーが積み重ねてきた従来の作品性をあえて壊す形で生み出されている。
本作の世界ではデザイアグランプリというライダー同士が優勝を目指して競い合い、蹴落とし合うゲームが開催されてきた。

仮面ライダーでゲームと言えば仮面ライダーエグゼイドだが、こちらはガシャットというカセットモチーフのアイテムを使用していた。『アクション』、『RPG』、『パズル』といった一本のゲームをライダーの能力に反映する、『ゲームの力を使った医療』が物語の主軸にあった。

本作は、デザイアグランプリという大きな一つの枠組みで、プレイヤーは仮面ライダーとなる。
その内容は『カイジ』や『イカゲーム』のような生き残りゲームであり、互いに優勝を競い合いながら敗者は次々と脱落していく。
言わば体感式のリアルゲームと呼べるだろう。

ただ、実際には先に挙げた作品群のような殺伐とした様相を呈しているわけではない。
実際の登場人物視点ではまさにデスゲームではあるのだが、視聴者から見るとどこかコミカルで楽し気で、それこそゲーム的な雰囲気を感じる。

流石に未就学児はまた別になるが、現代の子供達にとってこの手の殺伐とし過ぎないサバイバルゲームは、『フォートナイト』等で流行りのジャンルだ。
仮面ライダーの仮面要素がアバター性を生み出しており、自分であり自分とは異なる分身感が出ている。
それ単体では独自性とは呼べない『仮面』であるが、ゲームの一要素として見れば意図していた役割を果たしているのだと理解できた。

故にこそ、ベルトも日常的なモチーフに囚われない、生き残りゲームのシステムを意識したIDコアになったのだろう。
ライダーシステム自体がデザイアグランプリを構成するための一部であることを強調している。

バックルも同様だ。全員が同じ武装形式を共有化して着脱を自由にして、入手も毎回ゲームの進行と共に行われていく。
これもまたデザイアグランプリにゲームらしいアイテム要素やランダム性を与えている。

多人数参加型の生き残りゲームは、大抵マップにランダムで様々なアイテムが散りばめられているケースが多い。
ゲームを単調な繰り返しにしないめに、何を拾うかの運要素は重要だ。

そして、これには仮面ライダーだけでなく、敵であるジャマトも大いに関係している。
デザイアグランプリのジャマーエリアに出現する正体不明の怪人達。

従来のライダーでは戦闘員的な雑魚が出現することはあっても、主体は一体ずつ個性を持った個別の怪人だった(途中からその個体が量産化されることは増えたけど)。

しかしジャマトは最下級であるポーンジャマトのみが登場するステージも多い。
黎明Fと邂逅編であれば、ラスボス級の個体ジャマトを除けば、ポーン達を率いるルークジャマトが第1ステージで登場したのみだ。

またポーン達は雑魚でありながら、そのステージ毎にゲーム内容に沿った衣装と特殊能力を持っている。
城ジャマトがラスボス時には和装。宝探しゲームでは怪盗。神経衰弱ならトランプで、同じスートを同時に撃破しないと無限に復活する。
ゾンビジャマトならば噛み付いてゾンビ状態が感染して、頭部を狙わないと中々倒せないといった具合だ。

これはルークも同様で、登場時は怪盗ジャマトの首領役として登場した。
ラスボスも缶蹴りゲームの要領で缶を蹴り飛ばさないと強化されていく等、ゲーム性をもった独自性のルールを有する。

ジャマト達もまたデザイアグランプリを構成する一部なのだ。ジャマト自体にも共通した特徴と、ステージ単位での個性を与えることでゲームの世界観を形作っている。

もちろん、あらゆる願いを叶えることもまたゲームとしての『目的』を担う。
ゲームにはクリア条件と目的となるご褒美は必須だ。

仮面ライダーギーツはあらゆる要素が全てデザイアグランプリに集約されていき、一つの世界観として完成されている。

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仮面ライダーギーツの盗作問題

このように、デザイアグランプリという一つの要素で世界観を構築している本作であるが、これに対して物議を醸す発言をした人がいる。
それも、よくある特撮ファンによる批判とは全くの別物だった。

めちゃくちゃ有名な生き残りゲーム漫画『GANTZ』の作者である。

遠回しに(割と直球だけど)仮面ライダーギーツはGANTZの盗作だと述べている。著作権というワードを持ち出しているので、ニュアンス的には他の意味では取りようがないだろう。
一般視聴者ならただの戯言で済むが、作者様直々とは穏やかじゃない。具体的に似ている部分を抜き出してみよう。

・エントリーフィー厶がマスク以外ほとんど黒で、GANTZのスーツも黒。
・敵が最初は正体不明の生命体。
・敵を倒してスコアを稼ぐ。
・奏斗(ダパーン)の性格がGANTZの登場人物と似てる。

とりあえず、わかりやすく被っている部分を抜き出してみた。最後のキャラ被りは奥氏本人が別のツイートで述べていたので含めておいた。
たしかに似ている部分を探せばいくつも出てくるし、このように並べるとまるで盗作のようにも見えてくる人もいるだろう。しかしながらこれは箇条書きマジックだ。

デザイアグランプリは一種のゲームなので、ゲームを基準に考えてみよう。
初期装備はすごく地味で簡素、アイテムをゲットする毎に派手で格好良くなっていくのは、そんなに珍しい要素だろうか?

最初は謎だらけの敵で、話が進む毎に正体が判明してくるのは滅多に見ないような展開だろうか?

道中の敵を倒すとポイントを得られるシステムは近年稀に見るシステムだろうか?

奏斗のキャラ設定はもすごーく独特で、ギーツとGANTZ以外じゃまずお目にかかられないような性格だろうか?

要するに並べられている単体の要素はどれもよくあるもので、とりわけ珍しいものではない。
設定やシステム単位で著作権を認めると、一番最初に考えた人しか類似のネタを使えなくなってしまう。当然のごとくGANTZもあらゆる設定が盗作になるだろう。
そのためアイディア自体に著作権はない。

「そのアイディアの組み合わせが被っていれば著作権違反にならないの?」と疑問する人もいるかもしれない。
ならば似ている箇所と同じように、異なる部分を箇条書きにしてみよう。
(ギーツが序盤なのでGANTZも序盤の設定を元にする)

・参加者は全員死者
→ 参加者は基本ランダム

・ゲームは強制参加
→ 参加に拒否権はある

・主人公はごく普通の一般人
→ 主人公は根深い過去を持つ俺様系の天才

・相棒ポジションは主人公の友人
→ 相棒に近いポジションは無関係な一般市民

・脱落は死亡のみ
→ スコア最下位や重傷等での脱落も有り

・ポイントを得るのは敵を倒すのみ
→ ミッションクリア等でもポイントを得られる

・武器は一律に支給される
→ 武器はゲーム中に集めて、内容はランダム

・スーツを着ても顔は隠さない
→ スーツには個々に仮面が装着される

・武器を装備しても外見は変わらない
→ 武器を装備すると外見が変化していく

・ポイントを使って死者蘇生や強力なアイテムを獲得可能
→ ポイントに順位を競う以外の要素はない

正直、細かいところを見ていくと、違う部分の方が圧倒的に多い。書き記した要素も全体の一部分でしかない。
同じように箇条書きすれば全然違うものにも見えるわけだ。

これで設定が盗作レベルで似ていると言われても、無理やり近い部分だけを集めて主張しているようにしか感じられない。

黒いスーツの被りだが、仮面ライダーの素体はこれまでも黒が多かった。
先に挙げた龍騎のブランクも黒で、ゴーストやゼロワンの素体も黒だ。

黒いスーツで生き残りゲームをやっていて似てれば盗作ならば、逆説的にGANTZのスーツは龍騎の盗作も成り立つだろう。
というかGANTZのハードスーツと龍騎のサイコローグが実際かなり似てるとか言ってはいけない。似てるけど。

なお。デザイアグランプリは元々『フォートナイト』や『APEX』を意識しているのは明言されている。似たジャンルの作品ならある程度設定が似通うのは必然だ。
仮面ライダーはむしろ流行を取り込むことに積極的なコンテンツである。
それこそ有名ではあってもかなり古い作品であるGANTZより、最近話題のフォートナイトやイカゲームを元ネタにしていると考えた方が普通に自然だ。

そこまで踏まえてなお盗作だと思って苦言を呈するなら、きちんと手順を踏んで訴えるべきだろう。

しかし奥氏はこのように『盗まれてるけど呆れてるだけですよ』という姿勢だった。
現状ではただ難癖つけていうように見えてしまい、仮面ライダー側からしても迷惑行為でしかない。

ところでGANTZのタイトルと採点システムは、『がんばれロボコン』のガンツ先生が元ネタだと奥氏ご本人が明言している。
ロボコンの著作権は、当時どころか現在でも全然全く切れていないので、奥氏はきっと連載前にわざわざ東映に許可を取ったに違いない。
特に採点システムは、奥氏のロジックならただ似てるだけや、パロディだからは通用しないのだから。

【次ページ:世界観とストーリー展開のバランス感覚】

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