作品情報

【感想・解説】小説 機動戦士ガンダム 水星の魔女 1巻
タイトル 小説 機動戦士ガンダム 水星の魔女(1)
媒体
作者
シリーズ 機動戦士ガンダム 水星の魔女
作品要素

レビュー

水星の魔女のノベライズ版で、基本的には本編の焼き直し。
本編のプロローグ~3話までに加えて、オリジナルストーリーを一冊にまとめている。

新規情報は主にSF設定の補足描写が多くなる。
簡易的なMSの設定資料集なども付いていた。
映像媒体しか情報がない人にとっては、これもちょっとした補足にはなるだろう。

私はガンダム以前にSF好きなので、設定解説については純粋に嬉しい。
けど、多分ファンのライト層はあまり興味がなく、コア層が欲しがるタイプの情報だろう。

逆に言えば、全体の大部分を占める本編部分に目新しい情報はほとんどないと言っていい。
実質5話分を一冊に詰め込んでいるためか、文章は全体的に簡素になっており、『小説』としての面白さには欠ける。

宣伝文句にある『アニメにはない描写や小説ならではの細やかな表現など見所満載!』は、かなり話盛っているというのが素直な感想だった。
(文章構成的に作者の技量が低いとは思い難い)

特に簡素化は戦闘シーンの動きで顕著に出ており、本当に原作をなぞっているだけの文章になっているのが残念。
アクションが上手い小説を読み慣れていると、本来なら盛り上がるはずの戦闘シーンで、何の感情もわかないままページをめくっていくことになる。
本編を知らない層は、普通にアニメから入った方が楽しめるだろう。

次にオリジナルストーリー部分の感想。
(大きなネタバレになる部分は、クリックで表示可能な●で伏字化している)

分量は全体の二割程度。
完全な新キャラも登場するので〇.5話みたいな感じ。
(ハッキリどの位置に相当するのかは不明)

とはいえ、今の段階では本編の重要設定を掘り下げるなんてことはない。
また、作品全体のイメージに大きな影響を与える内容でもなかった。

ただし内容は普通に良かった。
オリジナル内に出てくる新しいSF描写も、間接的に本編とリンクしていて成程と思わせる。

こういう技術があるなら、日用品としてこんな風に転用されても不思議じゃないよねと。
ハイテク技術に対するアーシアン側との格差も必然的に浮き彫りとなる。

そういう意味での補足としては十分に価値があった。
これのおかげで本作の全体評価は『普通』くらいに持ち直した。上方修正の部分もやっぱりコア層向けな感じはするけど……。

本編ではあまり描写されなかった学園生徒としてのスレッタとミオリネの姿が見れるが、同人によくあるほんわか話やガチガチの百合描写ではまったくない。
むしろ本編内にあっても違和感は全然ないけど、展開が早過ぎるから入れる隙間ないんだろうなと思わせる内容だった。

同様に地球寮レギュラーだけど、出番は部分的なサポートに限られてきた●●●●●●にも物語的なスポットが当たっている。
一巻のアクションシーンで一番面白かったのが●●●だと誰が思うだろうか……。

オリジナルストーリーは普通に良作ではあるものの、残念ながら一巻では完結しない。
これのために買うなら自動的に二巻以降も継続となる。
全体の二割を読みたいがために、800円近い小説(kindleでも700円以上)の購入を継続できる価値を見出せるか否かだろう。

コアなファン層なら有りだと思う。つまり私は今後も買う(二巻は既に買った)。

総評

評価:3.0 評価基準

小説本編の大部分がアニメをなぞるのみで、文章的な面白さにも欠ける。
(量は少ないがSF設定の補足はある)
普通にアニメの映像美には負けているので、本編の履修目的であえて小説を選ぶ理由はない。

オリジナルストーリーは新キャラも出て面白かったけど、今のところ無くても本編にさほど影響は与えない。
全体の二割程度しかないオリジナル要素を使って、継続購入を狙う意図が感じられる。
それを良しとできる人を対象にした、主にコアなファン層向けの作品。

こんな人にオススメ

  • 水星の魔女の新作ストーリーは全部見たい!
  • もっと深いSF設定の掘り下げがみたい。
  • ●●●の活躍がもっとみたい。

二巻の感想も書きました。