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なぜ未来のはるかは最後のコマを託したのか【ドンブラザーズ 43話考察】

2023年1月11日

前書き

ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。

ドンブラザーズも年を明けて、ついに物語をたたみ始めました。
そこでまず回収されたのは、はるかの盗作問題。謎のウサギ漫画家椎名ナオキの正体です。

まあ、正体は大方の予想通りもう一人のはるかでしたが、Twitter上では新初恋ヒーローの漫画についていろいろと考察されていました。

しかし、未来のはるかやタロウの関係がほとんどで、猿原のことに触れている人はあまりいない。
それと未来はるかはなぜかたくなに漫画を描き上げようとしたのか。
にもかかわらず、最後のコマだけははるかに任せたのか。

この話は一本の線で全部が繋がっていると思ったのですよ。
なので、今回は新初恋ヒーローと未来はるかたちについて掘り下げて考察していこうと思います。

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最後のコマをはるかに託した理由

まず未来はるかの新初恋ヒーローについて。

未来のはるかはまだ自分が人気漫画家だった過去に戻ったけど、別時空だとは知らず初恋ヒーローを描き始めた。
つまり新と付けたのは、盗作云々とは無関係で、自分の手で過去作をリブートさせたから。

正確には同人誌で『失恋ナイト』を出していたのを後に改名している。
盗作されていた作品の名前に、わざわざ新と付けて新連載するって当時からかなり違和感があったので、謎が解けたって感じだった。

なお別時空については、はるかもキビポイントを使用した際に、『自分がオニシスターにならなかった別時空』へ移動しているのが伏線になっている。

未来はるかははるかよりも善人っぽい雰囲気だけど、はるかがトウサク呼ばわりされても正体を隠して描き続ける。
期限と迎えが来てもギリギリまで粘った。それだけどうしても完結させたい作品だったのだ。

ただし、劇場版『新・初恋ヒーロー』では、もう一人の自分が女優になって演じたクソ実写化を大絶賛していたので、根っこの感性ははるかに近い模様。内面は案外厚かましく利己的なのかもしれない。

とはいえ、完結させたかった意気込みは本編内でも強く現れていたので間違いない。
この明確な理由は本編内で明かされていないが、ものすごく濃い断片情報が幾つも散りばめられている。

まず、今回出てきた新初恋ヒーローの原稿では、どう見てもはるか・タロウ・猿原の三人が描かれていた。

漫画でははるかとタロウが結ばれる物語構成になっているけど、現実では未来はるかの恋人は猿原だった。
それもハッキリとラブラブな描写まで入れている。

そして、未来はるかは現在のタロウを見かけると怒りを露わにして殴りかかった。というかグーパンした。

未来はるかの漫画を否定して、「夢よりも、目の前の現実の方がずっと大事だ」と断じるタロウ。
それに対して未来猿原はタロウだけは変化がないと明言した上で、「君は夢を持つほど不幸ではない。だから幸せを知らない」と告げる。要約すると『夢がないからタロウは幸せになれない』わけだ。

今回、迎えにきたはるかの恋人が猿原であったことと、タロウに向けた言葉はすっっっごい重要だ。

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どちらのはるかにとっても初恋ヒーローは、魂のこもった大事な作品だ。
はるかが手伝うと申し出るも、ベタなどのアシスタント作業だった。

作品の完結に強い意志で挑んでいた未来はるかは、しかし自分の手で最後まで完成させることなく元の世界へと帰る。

最後のコマだけをはるかに丸ごと任せたのは、初恋ヒーローを巡る因縁の決着としては美しい。
盗作問題は解決してないけどそれはそれ。もう一つの解決すべき大きな事柄があるため、ソノザ編集長とやっていただきたい。

しかし、どれだけ綺麗な着地に見えても『何故?』という疑問は残る。

単に時間切れだったとは考えにくい。
明確に時間切れの兆候が出たのは戦闘終了後だった。

時間がかかり自分だけ原稿を描く罪悪感に負けたのだとしても、ラフやネームすら残さないのはおかしい。

物語を締めくくる最後の最後の絵なのだ。
はるかは画力だけならさほど差はないかもしれないが、猿原に対する感情や戦っている間に得た人生経験など、作品を描くための感性が異なる。
だからはるかは、最後まで未来はるかに勝てなかったと思っていた。

ならば残った理由一つ。
最後のコマは、未来はるかではなく今いる世界のはるかでなければ描けなかったのだ。

ここで触れるべきは未来はるかとタロウの関係である。
未来はるかはタロウに対して怒りを持っていながら、新初恋ヒーローでは恋愛関係を描いた。

そして今回迎えとしてやってきたのはタロウではなく猿原だ。戦闘では未来オニシスターがオミコシフェニックスを召喚してパワーアップを果たす。
本来の所持者であろう、未来タロウは最後まで現れなかった。
彼は何処で何をしているのか?

その答えが『幸せを知らない』と未来猿原のタロウに向けた言葉だ。
ここで重要な要素は微妙な言い回し。未来タロウは夢を否定しなければ、何かしら幸せになれる出来事があり、それを逃してしまったと言える。

そしてもう一つ、この台詞を言ったのが未来猿原であること。
物語序盤の猿原は、メンバー内でタロウに対して否定的で、対抗心を抱く敵対者ポジションだった。

とくにタロウの尊大さに対して強い忌避感を示していた人物でもある。
ドンブラザーズのボイコットも決行したものの、根がいい人なので失敗して、タロウが一度消滅して以降はあまり敵対しなくなっている。

またライバルポジションは完全にソノイへと一極化して、メンバーで唯一縦軸に絡むネタがないという可哀想な状況になっていった。
(この辺は別の理由もあると思うけど趣旨がズレるのでまた今度)

しかし、ドンキラーキラーが猿原の外見であったり、今回みたいにタロウへ具体的な苦言を呈したりは猿原本来の立ち位置なのだ。

タロウは未来猿原の指摘を意味がわからんといつも通りバッサリ切るものの、視線を逸らして考える仕草をする。そしてソノイに対しても夢を問うた。

『完全無欠』であるソノイとは同調できる同類だからライバルになれる。
しかし未来猿原は欠落のある人間として真っ向からタロウを否定する。

同じ敵対者でも持っている意味は大きく異なり、タロウも内心では自分に欠けているものを気にしているのだ。

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幸せを知れなかったタロウ。
ライバルの立ち位置であり、はるかの恋人でもある猿原。
そしてタロウに対して並々ならぬ感情を抱くはるか。

うん、これ完全に新初恋ヒーローは未来はるかに起きた出来事を元にして話を描いてるよね?

ここで新初恋ヒーローだと、猿原ははるかに選ばれなかった。
しかし現実ははるかの恋人になり、良い関係を築いている。
ライバルとして猿原はタロウに勝ったのだ。

じゃあ未来タロウはどうなったのか。
漫画の中でははるかを抱きしめ「必ず帰ってくる」と約束していた。
しかし、現実ではドンムラサメとの戦いにも現れず、オミコシフェニックスの所有者は未来はるかに移っていた。

なぜ未来のはるかは最後のコマを託したのか【ドンブラザーズ 43話考察】

出展:ドンブラザーズ43話

つまり、タロウと交わした約束は果たされなかった。
絶対王者たるタロウは、その強さゆえに夢を理解できず孤立し、戦いの中で帰らぬ人となってしまったのではないか。

なおトリとイヌも来なかった。犬塚を助けたのが未来はるかなら、もうお互いがドンブラザーズだと知っているはずだ。
未来はるかの描いた新初恋ヒーローの表紙にはジロウもいなかった。もしかするとシャンゼリオンの最終回並に破滅的な状況の可能性がある。
(プロデューサーと脚本家がどっちも同じで、やっぱりカオスな展開をしていた過去の特撮作品。マジおすすめ!)

ただ恋に破れただけでなく、自分勝手に戦う彼に寄り添えなかった無念が、未来はるかの胸中には渦巻いているのだろう。

そして本人が言ったよう戦いに疲れた未来はるかは、ある方法を思いつく。
過去へ戻ってタロウが消える原因を取り除けばいいのではないか。

タロウが敗れて消えるなら、それはおそらく脳人との戦いだろう。
そして22話『じごくマンガみち』だと、はるかは漫画に理解を示したソノザを通して、自分が人類と脳人との架け橋になろうと決意している。

これに未来はるかは失敗してしまった。未来猿原がソノザに対してインチキ編集長とブチ切れていることから、それが窺える。

自分が漫画家として売れっ子だった過去へと戻ろうとした理由がこれだ。
もう一度新初恋ヒーローを手掛けることで、脳人たちの心を動かして戦いを止めようとしたのではないか。

だが平行世界であったため、この作戦は破綻した。
ならば後に残るのは、未来はるかの個人的な未練だ。

新初恋ヒーローは過去の体験であると同時に、こうなりたかった未来の物語。
せめて空想の物語の中では幸せで平和な世界を描くことでけじめを付け、再び未来に進もうとしたのではないか。

けれど、別世界とわかっていてもタロウを見ると殴りかかれずにはいられない程に、彼女のわだかまりは大きい。
だからどうしても、二人が結ばれるーータロウとの約束が果たされた結末を描けなかった。

それでももう時間がない。心残りを作ったまま未来へ戻りたくない。
ならばと最後の一コマを、『まだ結末に至っていないはるか』に任せたのだ。

それに、未来の猿原たちは知らないかもしれないが、はるかはわかっている。

タロウはめちゃくちゃ強いくせして、案外ヘンテコな欠点を持っていること。

万能ゆえに孤独でクワガタしか友達がいなかったこと。

ドンブラザーズのメンバーからのけ者にされると寂しがること。

ずっと同じように見えて、タロウもまた変わりつつあることを。

だから、最後の空白を任されたはるかは迷わず描いた。
二人が笑顔で寄り添いあえる未来を。

それだけではない。まだ盗作問題が未解決な理由もここにある。
はるかはまだ漫画家としてのスランプから抜け出せていない。だから盗作を払拭できる程の傑作を生み出せていないのだ。

本当に一人前の漫画家となって、ソノザ編集長の心を震わせ脳人と和解する。
それは同時に脳人と近い精神性を持つタロウの心を感動させ、夢の大切さを伝えることにも繋がるのではないか。

そう、現在のはるかだから描けるのだ。
敵も味方も関係ない。お祭り騒ぎなハッピーエンドの結末を!

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