どうも、ゲタライド(@ridertwsibu)です。

ゼロワン側の更新を優先して感想書くのが遅れましたが、公開二日目の土曜日に鑑賞してきました。
実はこの日、最初は『かぐや様は告らせたい』の実写版観るつもりで前売り券買っていて、『グリス』の公開日を完全に失念していたのです。
(個人的な予定があるので二本とも観るのは無理だった)

その事実に金曜日ツイッターで気付いて、慌てて観てきた次第です。
Twitterはネタバレの恐怖もありますが、こういう時は本当にありがたい……!

で、『仮面ライダーグリス』はグリスを主軸にしつつも、『ビルド』というシリーズにおける仮面ライダーとはを描いた作品だったと思います。

公開前は最終章扱いなのに、エボルト不在はどうなの? と思っていたのですが、なるほどこのテーマ性だと確かにエボルトはいない方が綺麗にまとまるなあと手のひらジクウドライバーしました。

仮面ライダー作品に限って言うなら、割と手のひら返しに抵抗のない私です。
いやまあ、宇宙在住のエボルト放置しっぱなしで終わらせたのが問題なのは変わらないけどね!
あくまで一つの作品としてVシネマとしてビルドらしいテーマを掲げ、上手く着地した作品でした。

ここらかはネタバレ有りで、仮面ライダーグリスの感想と考察を語っていきます。

葛城巧と忍が和解できた理由

『ビルド』本編における葛城巧の立ち位置は客観的に見て不遇だった。
巧は序盤から『悪魔の科学者』と呼ばれ戦争を引き起こした戦犯として扱われ続ける。

巧の真意は、地球外生命体エボルトから人類を護ること。その防衛システムとしてビルドや一連のアイテムを生み出した。
それが戦争の道具に転用されても、あくまでエボルトを倒すためと研究を続け、結果『悪魔の科学者』という烙印を押される。

しかもエボルトを倒す使命から、万丈龍我に対しても敵意を抱き、恐らくは元々の性格だろうネガティブな性質も強く出ていた。
これはもう明確に桐生戦兎との対比だ。

戦兎は作られたヒーローだが、戦いの中で本物のヒーローとして成長した。
葛城巧のままでは優秀な科学者止まりで真に世界は救えないという事実を示すために、明確な比較対象となっている。

同時に葛城巧は桐生戦兎がヒーローとしてあり続けるためにも必要な存在だった。
戦兎が葛城巧としての記憶を思い出せるようになっても高校時代までなのは、言い換えると巧が『悪魔の科学者』と呼ばれた本当の暗部を引き受けたからとも考えられる。

本編でも自分が戦争の引き金となった人物であることに強く思い悩んでいたが、最大の暗部を直接自覚せずに済んだ。
桐生戦兎というヒーローは巧がいたことによって保たれており、父親である葛城忍と後腐れなく和解ができたのも、やはり『悪魔の科学者』時代の記憶がないことが関係しているだろう。
逆に後ろ暗い暗部を引き受けた巧は、尊敬していた父親とも和解できずに終わっている。

葛城忍も人類の敵に回って自分の手を汚している。
けれど死亡した情報を流してあくまで裏方として動いていた。
表立って行動した結果悪魔と呼ばれ、結果として戦争を起こすきっかけとなったのでは立場が大きく異なる。

今回、忍は旧世界の記憶を元にビルドドライバーを新たに作り出して、それをダウンフォールに奪われたことで新世界で大きな災いを招く結果となった。
ここで忍は初めて、本当の意味で息子と同じ立場となったのだ。

逆に巧は、これまでは自分が戦争のトリガーを引いた事実に苦しんでいたが、今回は逆に争いを止める希望を生み出す者となった。
巧は公の機関に在籍せず、隠れて独自に研究を続けている状態だ。これは立場上、旧世界における忍に近い立ち位置だ。

そして、巧は戦兎と精神を同居させることで、戦兎のヒーロー性とそれが世界を救った一連の流れを見ていた。
仮面ライダーの力が戦争に利用された事実は消えない。
けれど、正しき者が扱えば確かに世界の希望となった。その事実をある意味一番間近の特等席で見ていた。

その中で巧が見た姿はきっと桐生戦兎だけではない。
それが今回誰よりも最前線で戦った男である猿渡一海。
唯一巧の気持ちを汲み、同じ罪を背負い戦っていた氷室幻徳。
エボルトの一部として、かつて巧が命を奪うべきと考えていた万丈龍我。

万丈と巧が戦兎を介さず信用し合えたのは、巧が戦兎を通すことで仲間の大切さとヒーローを学んでいたから。
戦兎のヒーローが万丈達に伝播したように、巧にもちゃんと伝わっていた。

そして、ようやく悪魔の暗部を背負った青年の正義が、明確な形となって世界を救う希望となった。
葛城巧もまた、ようやく真の意味で葛城忍が成そうとしてきた正義の味方を、実感として得られたのだろう。

忍から謝罪したのは、正しく息子の無念を親として理解できてやれなかったと気付いたため。
巧がそれを受け入れ共に研究ができるようになったのは、父がかつて掴み託そうとした正義の意味を実感できたから。
『グリス』はビルド本編が積み残した葛城巧を救済する物語でもあった。

そして代わりに今度は戦兎が悪魔の科学者になるオチがあったけどね!
こっちもこっちで巧と精神同居していた結果、非情さの面で若干影響受けていたのではなかろうか……。

猿渡一海と三羽烏の絆をもう一度描き直したビルドの縮図

初っ端から葛城巧を延々と語ったのだけど、今回の物語における主軸は言うまでもなく仮面ライダーグリスこと猿渡一海である。
今作は徹底的に、一海のダメな部分と魅力的な部分をあますことなくお届けしてくれた。

一海は基本キモくてチャラい。
冒頭から『ドルヲタ、推しと付き合うってよ』でダメさ全開の気持ち悪さを、大きなスクリーンで堂々と写してくる。
そして三羽烏はカシラのそんなダメな部分も含めて丸ごと愛し応援して、みーたんにフラれたら傷心旅行も付き合う。

今回は普段の一海達を映してから本編へと入っていく。
そこで発生した遭難事件によって、一海達は唯一敵と渡り合える状況になる。
遭難中にファントムリキッドを浴びる流れは尺の問題でかなり強引ではあるが、遭難イベントでしっかりと三羽烏と一海の絆を描く。
ものすごくベタな話なのだけど、このベタさが三羽烏のキャラクター性に合っていて違和感がない。

三羽烏が寄せるストレートな信頼を、一海はしっかり受け止めてカシラとしての役割をこなす。
たとえ傷心した一海がヘマをやらかして三羽烏が見損なったとしても、結局三羽烏は一海を支えて、一海は皆を守るために戦う。

カシラのために自分達が犠牲になることを厭わない。
逆に一海はまた三羽烏を犠牲にするくらいなら、迷わずブリザードナックルを持ち出し、囚われのみーたんを助けるために戦う。
今回は体内の変化で命を落とす程の反動こそ無かったが、独断専行しているので一海はそのことをわかってないまま変身していたはずだ。
互いが互いを守ろうとする関係は『ビルド』本編でも描かれていたが、今回は改めてその絆を描いている。

ビルドの面白さは伏線の積み重ねによって話を広げていき、最後は熱いシーンに上手く着地することにある。
グリスは所謂『エモさ』や『尊さ』を押し出す『ビルド』らしさの縮図を作った。
Vシネクストの尺でこれをやるのは難しいと思っていたのを、見事にやってのけたなと思う。

これを出来た要因としては新キャラを敵のみに絞ったことが大きいだろう。
『仮面ライダークローズ』では新ヒロインを登場させた。
新ヒロインの登場そのものの是非は別にして、新キャラを入れると物語に絡ませる設定を描かなければならない。
ただでさえ多いとは言えないVシネマの枠が、それだけ圧迫されてしまうのだ。

主人公の猿渡一海、カシラを支える三羽烏、そしてヒロインのみーたんも全員TV本編でキャラの掘り下げはできている。
『クローズ』と『グリス』は新キャラ入れることに対する尺の圧迫問題を明確化させる結果になったのではないだろうか。

とはいえ、今回やった『エモさ』重視の熱い展開は、あくまでTV本編そのものではなく縮図だ。
例えば、『ビルド』のTV本編だと最初に青木の『死』を描き、その苦悩を戦争の無情さや悲惨さへと繋げていった。
結果的に戦争を起こした烙印を押された戦兎は、ハザードを使った後悔に沈むも再び立ち上がり、やがては戦争を止めるための奮起へと変える。
ここを丁寧に描いたから、後に青羽がカシラではなくあえて戦兎の背を押すシーンに、強い感情移入と感動が生まれるのだ。

黄羽や赤羽も同様に、三者三様にそれぞれの生き様と最期を見せており、それぞれの『死』が別々のドラマを作っている。
それだけ一海が背負うものも大きくなるのだ。その最後の大爆発がグリスブリザードへの変身なのは言うまでもない。

言い換えると、それだけ尺と助走を使って、大ジャンプして見事に着地する展開をTV本編でやっている。
カシラと三羽烏の絆を新たに描くことはとても大事だが、同じ『死』を背負わせようにも展開の流れからも「どうせ今回は生きてるんでしょ」という感覚が視聴者側に芽生えてしまう。
加えて、本編ぐらいに大きな感動を生むには、やはり如何せんVシネマの尺では助走距離が短い。
一海が散っていった三羽烏の命を背負い、ドッグタグを握りしめ戦うも、あの頃の感動には至らない。

ただし、三羽烏との絆によるグリスパーフェクトキングダムは、まさにファームの絆が詰まった完成度は素晴らしい
かなりアクション演出とCGに力が入っていて、こっちの方でも大きく勝負をかけていた。

また単純に新ライダーの性能だけで押すのではなく、一海と三羽烏の絆があるからこそ限界を超える力が発揮でたおいう設定も上手い。
こちらの観点であれば、ドッグタグを握りしめ三羽烏の想いを背負って戦ったことで格上の敵を打ち倒せた流れには、キングダムの能力と相まって説得力がある。
結果としてはTV本編の感動には届かなかったものの、一つの作品として十分な完成度になっていた。

ラブアンドピースの集大成

Vシネクストの『クローズ』は万丈龍我の成長と、エボルトに関する設定の掘り下げがメインの物語だった。
対して『グリス』は『ビルド』が北都~西都編辺りまでメインとしていた戦争に関する部分に決着を付けた。

戦争自体、引き起こした元凶であるエボルトが表舞台に上がったことで、やや有耶無耶(というか戦争どころではない状況になっていった)になったとも言える。
その途中で置き去りにしてしまった戦争というテーマを再度拾い上げた。
なおエボルトが出ると自動的に物語が惑星規模になってしまうため、宇宙に追い出しているこのタイミングだからできたとも言える。

それならエボルトが復活する前にやるべきで、最終章に持ってくる構成はどうなのという疑問はあるが……。
(一応、『クローズ』でキルバスが白いパンドラパネルを復活させたこともストーリー上は繋がっているので、構成的に全く無駄のというわけではない)

そもそも『ビルド』にとって戦争はとても大きく、そして重いテーマとして扱われていた。
その象徴とも言えるのが、先程も書いた青羽が戦兎に倒された展開だろう。
主人公が、怪人役とはいえ人間の心をそのまま持った者を手にかけたのは、今のところ仮面ライダー史上これが最初で最後だ。

戦争とは科学を大きく発展させる側面もあるが、ハザードトリガーのように暴走して人を殺めてしまう危険がある。
結果敵にハザードトリガーはただの暴走装置ではなかったという結論に至るが、今回はあえてハザードトリガーを戦争の道具として再利用している

メインの敵も暴走形態だったハザードフォームを更に突き詰めたネガライダーがメタルビルドだ。
青羽も思わず「俺はその色をしたビルドが一番嫌いなんだよ!」と反応して襲いかかる程だった。気持は痛いほどよくわかる。

デザインはタンクタンクフォームであるが両目とも黒く染まっている。
逆に両目がラビットであるハザードフォームもTV本編だと登場済みだ。
ベルナージュの力でラビットタンクハザードフォームの目が赤くなっており、この時は暴走が止まった。
つまり、両目共に黒いメタルビルドは完全に心を失った兵器だということを示している。

更にはTV本編では勝利の鍵となった白いパンドラパネルをも取り込んで、戦果をばら撒く目的のファントムビルドへと進化を果たした。
これも力とは使い方次第だという事実を巧とは逆方向に表していると言えるだろう。
自分の科学を活用するために戦争を起こす悪の象徴を相手に、一海はあくまで戦争を止める希望となるため愛と平和を唱えた。
『ビルド』における仮面ライダーとは『ラブアンドピース』の象徴なのだ。

なお、Vシネクストになって恋愛話が増えたが、これは多分ラブアンドピースのラブを表したかったのだろうか? メインライダーで主人公にだけはラブの要素がないけどね!
(平成ライダーだと設定上、最初から恋人の彼女を救う以外での恋愛ネタは無くなはないが稀少なケース)

集大成という面においては、戦闘シーンにこれまでは見れなかった華があった。
ビルドの悪い面として性能のインフレについていけず、メインのライダー以外は噛ませ犬になる展開が多い。
他の平成ライダーでもよくある展開とは言えるのだけど、ビルドでは割と顕著な印象だ。

『クローズ』ではせっかく記憶を取り戻して戦いに参加したグリスやローグは完全にクローズの引き立て役として扱われていた。
今回はこの部分が大きく異なる。

まずグリスはちゃんと全フォームが活躍できている。
グリスブリザードはTV本編でも出番が一回限りだったため、スーツもかなり綺麗で再び大暴れした上、メタルビルドにも互角以上に善戦し追い詰める活躍を果たした。

ローグこそやられ役ではあったが、その後はなんと強化版のプライムローグが登場。
私の知る限りハイパーバトルDVDの限定フォームが逆輸入されるのはこれが初めてだ。

他のメンバーも最後の決戦では皆が戦闘でちゃんと活躍している。
マッドローグまで復活して、今回は明確に味方として共闘した。

『ラブアンドピース』の護り手となる仮面ライダー。
それは一海だけではない。皆が仮面ライダーの本質を示すように戦争になりかけた日本を救うために戦う。
まさしく『ビルド』というシリーズを締めくくる集大成に相応しい有志だった。

後は、できれば小説版で放置したエボルトどうにかしてください。