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仮面ライダービルドのベストマッチが創る新世界

2018年9月8日

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ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。

ジオウの第二話でベストマッチというタイトルが使われました。
ビルドという作品は、既存の設定を『実はこうだったのだ』と後になって再度持ち出して扱うのが上手い作品です。
中でもベストマッチという単語は、劇中でもかなりの重要ワードとして成長しました。

なら仮面ライダービルドにとって『ベストマッチ』とはどういう役割と意味が込められていたのか。
それを改めて考えてみたいと思います。

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異なる二つの要素で作るベストマッチ

ビルドは二つの要素を組み合わせて力を発揮する仮面ライダーだ。
全く別の要素を二つ組み合わせて変身するのは『仮面ライダーW』とガイアメモリが初だった。
Wでもメモリの組み合わせに相性が存在したが、ビルドでは二つの相性をより明確化させて『ベストマッチ』という概念を生み出した

概念でいうと『仮面ライダーオーズ』のコンボに近い。
だがビルドは基本フォームの『ラビットタンク』がそうであるように『有機物』と『無機物』の組合せでなければならない。

ニンジャとコミックみたいに見たまんま直感で相性良いだろこれと思うものも存在はしている。
けれど基本的に交わらない二つの要素を組合せて面白味を見出す
同属性のメダルを合わせたオーズのコンボとは真逆の発想だ。

またWやオーズでは安定性のある組み合わせやコンボは重要視されてこそいたが、亜種の扱いもまた戦力の幅を広げる要素として積極的に用いられた。
対してビルドではベストマッチでの戦闘が基本であり、ベストマッチ外での戦闘はむしろ希少なケースである。
全編通してベストマッチの組み合わせで戦うのが当然の扱いだった。

これはガイアメモリやオーメダルに比べて、フルボトルの本数がかなり多いことが理由の一つだ。
(なんせ多すぎて本編では全然使い切れていない問題もある)
多数のボトルからたった一組のベストマッチを見つけ出していく。
戦兎の「さあ、実験を始めようか」のセリフにもあるよう、ビルドにとって変身とは『実験』でもあるのだ。

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戦兎と龍我のベストマッチ

ビルドはストーリーが進むと通常のベストマッチでは出力が足りず、ボトル外のアイテムを使った変身や、外付け強化パーツの使用が増えていく。
さらにはラビットラビットやタンクタンクといった、ある種『ベストマッチ』の否定みたいな組み合わせも出てきてしまう。
TV劇中の最強フォームは、もはや当然のようにボトル全部乗せのジーニアスフォームだ。チョースゲー!

こうしてボトル戦闘によるベストマッチは存在意義が薄れていき、ベストマッチは別の要素へとその意味合いを移していく。
最終的にビルドという作中で最も重要視されたベストマッチは、ボトルではなく主人公コンビだった。

物語の当初、龍我は殺人の冤罪を着せられ、更には最愛の彼女まで利用されて殺されている。
龍我にとっての戦いは無実の証明だった。
また彼女を殺された復讐も戦う動機の一つになっていただろう。
この二つは十分に共感できる動機であり、善悪で簡単に割り切れる問題ではない。

だが龍我の戦いは自分のために行われるものだった。
復讐だって恋人に望まれたわけではない。
劇場版では仮面ライダーになった後ですら、自己犠牲して戦う戦兎達に納得できないと悩む場面も見られた。
それでも龍我が戦えたのは『自らを犠牲にする者達のためなら自分も戦える』という気持ちを落とし所にしていたためだ。

対して戦兎は記憶を失いながらも最初から科学が人を救うと信じており、ラブアンドピースを目指して戦っていた。
自分のためだけに戦う龍我に、最初は変身アイテムを渡すことを躊躇う場面もあった程だ。
これが戦兎の過去に迫っていき、ライダーシステムが戦争の道具になり出すにつれ、正義感に溢れていた信念も揺らぎ始める。

人を守るためにライダーシステムが、逆に戦争の引き金となり状況を悪化させていく。
しかも戦争を終わらせるためには、もっと強くてリスクのあるシステムに頼らざるを得ない悪循環。
また戦兎の正体が『悪魔の科学者』と呼ばれる葛城巧だったことも、精神的に追い詰める要因となった。

記憶はなくとも、ある意味自分こそが戦犯であり、戦いを終わらせる責任がある。
気が付けば戦兎の正義は贖罪と責任に変わろうとしていた。
それを共に戦い支えたのが龍我だったのだ。

龍我は葛城巧だった頃の戦兎を知らない。
科学は世界を救うと信じ、ひたすらにラブ&ピースを掲げて戦ってきた、その心のあり様こそが戦兎だと信じた。
無茶をして暴走した戦兎を、自ら先に暴走を乗り越え救い出したこともある。
追い詰められていく戦兎を救い、自らも戦兎を信じて戦っていった龍我もまた、最初は理解できなかった『ラブ&ピース』が己の信念となっていた

そして物語終盤で桐生戦兎という人間自体が、黒幕にデザインされた虚構のヒーローだったことが発覚する。
しかし虚構だったヒーロー像に中身を入れてくれたのが、龍我であり仲間達だったと気付く。
最期は龍我のドラゴンボトルと共にエボルトを倒し、歪められた世界を本来あるはずだった形『新世界』へと戻した。

登場人物が増えて話の構造が複雑化しても、二人で支え合い影響し合うことで強固になっていく、コンビでの友情はずっと物語の根幹にあった。
ここで重要なのは先に解説したボトルのルールだ。
戦兎が使ったのは自身のラビットと龍我のドラゴンである。
どちらも有機物側ボトルなので本来使えない組合せのはず。

しかしどちらのボトルも長い戦いの果てに金の銀のボトルに色を変えていた。
これはもはやラビットとドラゴンのボトルではなく、桐生戦兎のボトルと万丈龍我のボトルになっていたのだ。

そして戦兎にとって戦いとは同時に実験。
相棒とのベストマッチという実験結果が新世界の創造だったとも言えるだろう。

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