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仮面ライダーファイズ/555 9話感想 ファイズは正義の味方なのか

2019年6月17日

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仮面ライダーファイズ/555 9話『社長登場』

ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。

ファイズは7~8話がかなり人気ですが、9話は話数的な意味合いではなく8話の続きとしての観念が大きいです。
また、巧と木場がそれぞれの立ち位置を定めたことにより、両陣営の絡みも本格的になってきました。

何より村上社長の登場が大きなキーでもあります。
龍騎までの平成ライダー全体から見ても、悪役としてこれまでの怪人とは明らかに趣が異なる存在です。

敵が見えたことで世界観も広がりだして、『仮面ライダーファイズ』は今回から第二章へ入ったと言えます。
ではでは、今回も感想と考察を始めていきましょう!

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スマートブレイン社長がこれまでの怪人都は異なる理由

朝から健康的にマイバイク(自転車)で現れて、独特な雰囲気と話し方の村上社長がファイズの世界に重役出勤だ!
現代でこそ柔軟性のあるやり手の社長みたいな人物像は珍しくないが、放送時期が2003年であること考えると、頭の固い杓子定規な社長キャラではなくアグレッシブでやり手な社長を意図して強く演出している。

しかも年齢は一般的な社長イメージに大きくズレない程度に高く、大人らしい手練手管の老獪さもある。
力任せに襲ってベルトを奪うのではなく、相手を立てて信用を得つつ論理的にベルトの所有権を明け渡すよう要請する怪人。

ベルトが真理を守るためのものという考え方は、狙われまくった経緯から普通におかしいのだけど、理由付けとしては上手い。父親を肯定されて、その上から正論を展開されると真理は納得しきれなくとも反論しにくいのだ。

ファイズは巧が主人公であっても、全体を俯瞰すると明らかに群像劇である。
巧サイドと木場サイドが出揃いキャラクターの確立も済んだ。
特に巧は自分のやるべきことを明確化させている。

ならば次は敵サイドのお目見えだ。海堂の登場を少しずらしたことからも、全体のキャラ数が多いので小出しにしているのがわかる。

木場はファイズと敵対しているが正確にはすれ違いによって陣営が分かれているだけで決して悪人ではない。
社長である村上峡児を登場させることでスマートブレインを共通の敵として置こうとしている。

そう考えると色々納得がいく。
村上はどうしてわざわざ海堂をファイズに選んだのか。
これは『人を殺さないオルフェノクグループ』を形成しつつある木場に対するカウンターだろう。

人を襲うか襲わないかが宙ぶらりんな海堂に、オルフェノクらしくないオルフェノクを襲わせる。
こうすることで海堂を『人間襲わないオルフェノク軍』から追い出す効果があるのだ。

クウガ~龍騎の怪人は意思の疎通ができない存在だった。
これまでも人間の姿をした怪人はいたが、根本的な思想が人の倫理から外れている。唯一黒幕であり純然たる人間だった神崎士郎も狂信的で妹以外は説得不可能な、ある意味人間性に欠ける存在だ。

村上社長は怪人でありながら元人間のため人の倫理観も理解しており、それを惜しみ無く利用してくる。力に頼らずとも社会的にめちゃくちゃ強い。平成ライダーにおいてかなり革新的な敵キャラだ。
怪人サイドに人間性を持たせる試みは、何も木場達三人に限った話ではない。

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正義の味方と人間の味方

真理に正義の味方らしさを求められた巧は、これまでのような捻くれた否定ではない返しをした。
「俺、正義の味方なのか? 微妙な気がする……」

ファイズのベルトを使って、オルフェノクから人間を守る。
言葉にするとそれは確かに正義の味方と言って問題はない。

ただし正義の味方と言われた張本人は車上荒らし未遂犯で、免停の講習を寝て過ごす問題児だ。
巧は言葉とのギャップに戸惑っているのが見受けられる。
少なくとも一般的なバイクで颯爽と現れるヒーロー像とは程遠い。
(この会話をした後、財布を忘れて照れ隠しに真理へ奢れ! とか言っちゃう程度には正義感不足)

それでも最初の巧だと、正義の味方と言われたら「勝手なこと言うな」とか「よくそんな恥ずかしいこと言えるな」とか返して頭ごなしに否定していただろう。
そだけ巧は自分がファイズであることに愛着や使命感みたいなものを抱き始めている

正しくはファイズベルトやオートバジンを自主的に預かった時点でその気はあったのだけど、夢を守ると言葉にしたことで巧は自分の気持ちを自覚した。
夢を持たない旅人だった巧にとって、ファイズは初めて得た自分のやるべきことなのだろう。

故に真理が村上にベルト返すシーンで、巧は返却を躊躇った。
ただしあくまで『微妙』なのでら拒否できる程に強い意志は見せられずに返してしまう。
少しずつヒーローとしての自覚と、自分のやりたいことに気付いていく成長を見るのがすごく楽しい。

また、木場はオルフェノクから人間を守る選択をした。
人間不信になっても不思議じゃない裏切りを受けても、頑なに人間を信じると宣言する。

同時に海堂や長田には同じオルフェノクとして仲間意識を持っており、オルフェノクがファイズに襲われている姿を見て激高した。
自分がオルフェノクになったことからはもう逃避していない。

ただし、木場の行動は完全に整合性が確立されているものではない。
ファイズがオルフェノクを倒す者だとするなら、やっていることは木場と同じだ。
現に木場は既に自分の意思でオルフェノクを一人倒しており、後戻りできなくなっている。

心優しい青年でもあるのは間違いない。けれど、冷静沈着とは言い難く感情に流され動く場面も多い。
だから木場の行動は所々で矛盾が生じるのだ。

そう考えると木場は正義の味方ではない。
あくまで人間を守って肯定的であろうとするのは、自分も人間でありたい=心までオルフェノクになりたくないという気持ちの裏返しだ。
明確な信念があるようで実はそうでもなく、『人間でありたい』という結構自分本位な願いが核なのである。

そのため木場の見せる正しい人間の在り方も曖昧なものでしかなく、当人の裁量で決められるものでしかない。
ただし、正しくある姿勢が問題なのかと言えばそうでもなく、心までオルフェノクになりきっていないのは木場の中にある『正しさ』が殺戮衝動を抑え込んでいるからだ。
つまり木場の正義感はそのまま木場の人間性であると言える。
木場は正しい人間なのではなく『正しくあろうとする人間』なのだ。

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