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滅亡迅雷.netの罪と罰
不破が決死の覚悟で滅亡迅雷と戦ったのは、滅亡迅雷.netが最初から死ぬことを前提で計画を組んでいたからだ。
そもそも、何故彼らの計画は死を前提にしていたのか。
滅が、ただ自分達が暴走しても不破が止めてくれるだろうと思っただけなら、A.I.M.S.のバルキリーだけを狙うのは違和感がある。それに滅亡迅雷.netは自分達の滅亡を前提にする必要がない。
これはどちらもそうせざるを得ない事情があっためだろう。
滅亡迅雷.netが死を選んだ理由は、犯した罪への償いだ。
あくまで計画は全てリオンが用意したもので、それが崩れた結果仮面ライダー滅亡迅雷は大暴走。仮面ライダーザイアを倒してZAIA日本支社は完全に崩壊した。
これだけ見ると滅亡迅雷.netは可哀想な被害者であり、ソルド達を救った英雄に見える。
それはどちらも事実であるが、好意的な視線だけでは大事な点を見逃してしまう。
彼らは仮面ライダー滅亡迅雷になったのは、あくまで自由意志によるものだ。
以前のデイブレイクは、アークの意思のままに起こした行動。人間視点ならば洗脳された結果に近しい。意思なきヒューマギアは拳銃と同じ。だからこそトリガーを引いたのは『悪意を持ってラーニングさせた』アークなのだ。
(当然そのアークに悪意を学ばせた天津の責任でもある)
しかし今回の滅亡迅雷は違う。
今の彼らには心がある。
変身すると暴走してしまうと理解しながら、自分達の意思で仮面ライダー滅亡迅雷となり聖戦を起こした。
ZAIA日本支社破壊によってもたらされた多くの死傷者は、彼らの行動による結果だ。
天津が何も知らなかったように、リオンを除く社員達の大部分は事件に加担していない。無実の者達を大量虐殺したことは否定しようがない。
それは正義ある行動だったのかもしれい。
だが、そのためならば人間の命を犠牲にしてもいいと思った。それにはどういう意味が込められているのか。
組織で仲間と働く意義を亡は知る。
そして『会社』という仲間達が集い働く集合体を壊した。
家族の大切さを雷は知る。
そして多くの人々から永久に家族を奪った。
迅は或人の理想に賭けた。
そして人間とヒューマギアが共に手を取り合う夢を、迅は裏切った。
それら全てをわかっていながら、滅は三人の意思を認めた。
これが滅亡迅雷の罪、正義の暴走だ。
滅亡迅雷だってこれが絶対に正しいと思っていたわけではない。
いくら覚悟を決めたって虐殺なんてしたくなかった。
それでもアークを基にした力の前に増幅された悪意は止められない。
割り切れない心の悲鳴こそが、仮面ライダー滅亡迅雷の内から溢れ続ける叫びだ。
この結末、特に虐殺になるだろうことを察していたため、迅達三人がすぐに覚悟を決めても滅たけは迷っていた。
滅の決意を後押ししたのは不破の気に入らないヤツはぶっ潰す思想だ。
自分達が聖戦を始めて人間達を傷付ける存在なり果てたとしても、それを許さない不破達が必ず止めてくれる。そう信じて結末を託すと決めた。
滅亡迅雷は想定通りに暴走しながらも、かろうじて滅が考えていたプランを実行に移す。
それが確実に自分達を倒してもらい、かつ被害を最小限に押し留めるために、A.I.M.S.のそれも仮面ライダーバルキリーのみを狙うこと。
滅亡迅雷の悪意は今回の場合、ヒューマギアを無理やり縛って自我を奪い戦争の道具にする行為への怒り。つまり義憤、そこから生じる憎悪が主だろう。
怒りの矛先はそれを決定して実行したZAIAに対してだ。
だからリオンを仕留めることにはまるで迷いがなく、目的と直結するZAIA自体への攻撃も本心では望んでないとはいえ止めようがなかった。
けれど、他の全く無関係な人間に対する直接的な憎悪はない。
もはや止まることはできないとしても、無関係な者達への攻撃だけはなんとか抑えられたのではないか。
バルキリーを狙ったのは、彼女が日本防衛の要であり、自分達を止めてくれるもう一人の仮面ライダーだから。
また滅亡迅雷がA.I.M.S.を狙っていると知れば、必ずそこにバルカンも現れる。
そして、亡は唯阿にアサルトグリップを渡していた。まさに滅亡迅雷攻略の鍵となるアイテムだ。
自分達を倒すお膳立てを全て揃え、更に犠牲者を最小限に抑える。その方法がバルキリー一点狙いだったのだろう。
ここまで整理して考えると、行動の中に一つ謎が生じる。何故、自分達の体を破壊したのかだ。
仮面ライダー滅亡迅雷はどう見てもやる気満々で迷わず自分達の体を破壊している。けれど、そこにZAIAへの憎悪は全く繋がらない。
完全に暴走していたなら、無関係の者達を攻撃しない行動と矛盾する。少なくとも仮面ライダーザイアを倒す邪魔をした不破がスルーされる理由がない。
だったら、あれは仮面ライダー滅亡迅雷の憎悪によるものではなく、滅亡迅雷.netとしての意思なのだ。
もし体が残っていたらA.I.M.S.や飛電が自分達を生かして解決する方法を考えついてしまうかもしれない。
彼らは、還るべき肉体を破壊することで、自分達の手で自分達が助かる可能性を潰した。
滅亡迅雷.netが起こした聖戦は、ソルドを救う結果をもたらしたとしても、罪無き人々の命を奪い、ヒューマギアと人間の関係を再び最悪な状況にした。
それは許されざる大きな罪だ。残念なことに、彼らには「人類とはこれからまた仲良くなればいい!」と考えられる1000%前向きな精神はラーニングされていなかった。
そのため滅亡迅雷は自分達に確実で最大の罰を与えると決めたのだ。
滅との会話を経ており、かつ目の前で肉体破壊を見ていた不破は、恐らくその事実に気付いた。
最初から赦されようなどと甘いことは考えない。
罪に対する罰を受けよう。
正義の暴走、それによる憎しみの連鎖はさせない。
かつて悪意に囚われた或人は、それでも『赦す』ことで悪意の連鎖を断ち切った。
対して滅は『許さない』ことで悪意の連鎖を終わらせた。
【次ページ:受け継がれる意思と未来を創る社長達】
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