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お仕事5番勝負総括 見所はお仕事勝負ではなく世界観【仮面ライダーゼロワン 感想・考察】

2020年3月29日

サウザーの戦いはゼロワン情勢を俯瞰すると1000%面白くなる

レイダーが不和の象徴であるとすれば、不和の代表が仮面ライダーサウザーだ。
変身前の天津垓と異なり、サウザーは安定して格好いいライダーだと思っている。

滅に近い尖角的なデザインだがより激しく尖り、ゴールドカラーでボス仕様なデザイン。
金色も派手な金ピカにするのではなく、あえて少し黒を入れた暗い色合いがカリスマ性を演出している。
しかも二者間の敵対を煽っていながら、当人はプログライズキーとゼツメライズキーを同時使用の豪華さだ。

性能的に拡張性がないとの意見もあるけれど、これも本編をちゃんと見れば真逆であるとわかるだろう。
玩具のベルト仕様は確かに拡張性皆無だが、そちらに認識を引っ張られ過ぎている人もいるのではないだろうか。

サウザーの場合、サウザンドライバーは拡張性ではなくキー二本刺しによる桁外れな高出力が売りだ。
シャイニングホッパーの蹴りや銃撃に怯まず、滅の必殺技を受けてもそこまでの大ダメージになっていない。

そして拡張性は武器のサウザンドジャッカーに割り振っている。
直接キーを差し込む以外にも、戦う相手からキーのテクノロジー(データ)を抽出できる。
要するにデータのコピーで、一度手に入れた力はいつでも自在に扱っていた。

他のライダー達はキーを差し替えて都度能力を特化させているが、サウザーはそれよりもシームレスに切り替えられる。換装を排除した代わりに得た汎用性だ。
登場初期に吸収したキーがファルコンとウルフはどちらも素直にすっ飛んでいく飛び道具だった。
そのため差異がわかりにくくて、なんか同じようなもの繰り出す技みたいなイメージが定着してしまったのもあるかもしれない。

また、局所的に見ればのワンパターンと言われるサウザーの戦闘は、俯瞰して見るとゼロワン作品内の世界情勢とリンクしている。
サウザー登場時点はまさにお仕事勝負の開始で、ZAIA側が二連勝と最も勢い付いていた。
当然販促面も大きいだろうけど、ここでサウザーが圧倒的な力を見せている。

続く三戦目では飛電側の反撃が始まった。
ここでプッツンした或人はアサルトシャイニングでサウザーに迫る力を発揮。
そしてメタルクラスタホッパー登場によって初の敗北となった。

お仕事5番勝負側も飛電初勝利だが、ゼツメライザーを使った暴走によるイメージダウン戦略の始まりでもあり、メタルクラスター自体がZAIA側の仕掛けだ。
敗北してボロボロになっても高笑いする元気があるのは、計画はあくまで予定通りに進行しているため。

次回予告で「遂に逆襲されおった!」と思ったら、完全に予想外な流れで、視聴者をイライラさせる要素でもあったのも事実だろう。
だがお仕事5番勝負編というか、もっと大枠で見たZAIA編のボスキャラである。
前章で語ったように、お仕事5番勝負が壮大な計画の流れによって進行していることを踏まえると、流れ的には正しいのだろうなと思う。流れ的には。
次話でメタルクラスタホッパーをコントロールされ、今度こそ完璧な敗北を喫し、ようやく溜飲を下げることができた。

そしてサウザーはメタルクラスタ登場からが特に面白い。
いつもの流れだと、新ライダーが登場すれば前ライダーは噛ませ犬になってしまう。
けれどサウザーは持っていた隠し玉を発動させて、まさかの実力でメタルクラスタホッパー撃破をなし得た。

内容も歴代キー集合技。それ主人公サイドのやる技だよね!?
ここまで悪辣さを全面に押し出してきた中での不意打ちで、映像以外でも展開的な面白さがあった。
またサウザーが勝利するフラストレーションが溜まる展開の中で、面白い工夫を入れてきたなと思う。

メタルクラスタがトンデモアーマーにより次元が違う強さを発揮したが、それでも歴代プログライズキーの力を結集すればそれ以上の力を出せる。
これは天津がプログライズキーのデータを収集する意図とも繋がっており、ランペイジバルカン登場前の伏線としても機能している。
何より、これによってメタルクラスタがコントール可能になっても、サウザーはギリギリ型落ちした噛ませ犬にならない。敵としての威厳はキープしたままだ。
最終的には、飛電インテリジェンスがアウェーの環境を作り、唯阿との二人がかりならメタルクラスタに勝てるバランス感を定着させた。

それだけでなく、復活した滅亡迅雷.netも途中から戦線に復帰して、戦闘でも混乱が加速していく。
ここでもバーニングファルコンと互角の戦い。その後の滅ともまさかの互角だった。
両方の戦いにおいて、サウザーは全開で出し尽くしている感じではなく、敵の必殺技でも倒しきれない堅牢な装甲も相変わらず。
天津にとって滅や迅は動かれすぎると厄介だが、ある程度の範疇ならヒューマギア排斥運動の後押しにもなるだろう。

逆にアサルトウルフはフルボッコでどんどん格落ちしていくのだけど……。仮面ライダー雷ごと彼の活躍が遠い記憶になっていく。
戦果らしい戦果は洗脳で操られた時と、暴れるメタルクラスタから単身でベルト剥ぎ取ったくらいしかない。やっぱりゴリラじゃねぇか!

加えて、復活した滅亡迅雷組と或人は直接対決をしていない。
これは主人公が或人でも、物語の中心に立ち、展開を回しているのは天津垓である事実を示している。

戦闘能力の基準ですらサウザーなのだ。
おかけでメタルクラスタホッパーが一人勝ちして、皆を置いてけぼりにする展開になっていない。
一人戦力外になっていたバルカンの強化、ランペイジを強調できる展開にもなっている。

ただでさえストレス強い展開。その最後のカタルシスポイントとして、これまで良いところのなかったバルカンがキー全部乗せのランペイジバルカンに進化。レイダーとサウザーを問答無用にぶっ飛ばす。
洗脳を除けば立場的なしがらみがなく、その洗脳もキーのごとく力尽くで破壊した不和が、悪を叩き潰す流れで締めた。まさにゴリラ技の所業。

サウザーはライダーと強化が連続する平成二期以降において、初めて全体の能力バランスを崩壊させず、混沌としていくゼロワン情勢をコントールすることに成功している。
何気にこれは初の快挙ではないだろうか。
もし中身が四十五才児でなかったら、仮面ライダーサウザーは今より1000%称賛されているはずだ!

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