どうも、ゲタライド(@ridertwsibu)です。

長かったお仕事勝負編も遂に決着!
いやあ、ネットを眺めると全体的に見事な賛否両論っぷりだったなあと思います。

不評な理由はわかるんですよ。
一見するとワンパターンに見える展開。
ひたすら悪辣な行為を繰り替えす1000%社長。
何より一~二話単位で観るとフラストレーションの溜まる回が多い。

こういう展開は毎週で視聴するドラマのスタイルでは不評になりやすいですね。
特に仮面ライダーは一年スパンの作品ですから、普通のドラマよりイライラ期間も長くなってしまう。

仮面ライダー響鬼でも当時毎週視聴しいた勢は後半すごい不評大噴出だったのが、後で一気に通しで観た人だと『あれはあれで面白かったと』言う人を結構見ます。
毎週視聴していた私ですが、一気観した人の気持もわかるんですよ。
どちらが正しいではなくて、長期の構成で作られた作品は、それだけ印象が異なります。

特に個人的なお仕事勝負の感想としては、全体を俯瞰してみた作品構成はものすごくロジカルです。
お仕事勝負終盤に入ってから再び観返すと、「ああ、だからここはこうだったのね」みたいな要素がかなり出てきました。
特にメタルクラスタホッパーと選挙戦が出てきて「なるほど!」って意図が見えやすくなっています。

でもね、普通毎週観ててフラストレーション溜まってる人が、あえてもっかい一から全部見直すとか早々しないじゃないですか。
それに構成はロジカルなのに、細かいところで描写が雑だなとか思うところは目に付いてしまう。

故に面白い要素が見えづらくて、欠点ばかりが目立つ。非常にもったいない感じになってしまってる。そんな印象がかなりあります。

というわけで前回はAIから見たお仕事勝負でしたが、今回はテーマ性から見た観点で感想と考察をガッツリ語ってみます。

お仕事5番勝負編のお仕事勝負は主題じゃない

お仕事5番勝負のモヤモヤその一。
お仕事5番勝負と銘打っておきながら、勝負そのものが正しく成立していると言い難いという根本的問題だろう。

ここに固執してしまうと、お仕事勝負は確かにモヤモヤする要因の多い展開だ。
誤解を恐れず書くなら、お仕事5番勝負においてお仕事勝負自体は重要ではない。

大切なのはお仕事勝負を通じて起きていること。
そのため、展開そのものは無意味でも無駄でもない。

何故お仕事勝負の展開が必要だったのか。何のためにあったのか。そこを一つずつ整理すれば本テーマで伝えたかったことに結びついていく。

5番勝負はそのほとんどがヒューマギア不利な種目だった。
心を問われる芸術。
心の機微を読み物を売る営業マン。
裁判システム的に不利前提の弁護士。

消防士は唯一機能上ヒューマギア不利ではないが、精神面における未熟さの指摘や、最初から隙を突いてのマギア化が計画されていた。
そして最後は芸術と同様に、ヒューマギアはその機能を持ち得ない政治による投票対決。

これらの勝負は何かしらヒューマギアの持つ重要な欠陥を指摘している。
ヒューマギアにおける心の欠如と不安定さ。これには消防対決も含まれる。

営業職でヒューマギアがエリート以上の成績を出すと、人間は仕事を奪われる。
裁判や政治で、機械が人を裁き導く側に立つことも、議論が分かれる問題だろう。
だがいずれも、いつかやってくるAI社会の可能性だ。

ハッキリ言ってヒューマギアの運用は、人類にはまだ難しい。
人間は進化の過程であらゆるものを使いこなこなして進化してきた。

火を使いこなした。
包丁を使いこなした。
自動車を使いこなした。
ネットを使いこなした。

だが、物に自由な意思が宿ればどうなるか。

意思のある火を使いこなせるのか?
意思のある包丁を使いこなせるのか?
意思のある自動車を使いこなせるのか?
意思のあるネットを使いこなせるのか?

そして、意思のある機械、ヒューマギアを人間は使いこなせるのか?
使いこなせないのなら、意思を持った包丁が人を刺した場合、その責任はどこへ向かうのだろう?

包丁自身か。けど包丁が悪いと裁いてそれで終わるのとは思えない。なら所持者への責任追及。それとも販売会社か。簡単には割り切れない問題とケースが次々沸き起こる展開は容易に想像できる。

これらの問題を人間はどう対処できるのか。その答えは恐らくゼロワン本編中では見出せない。出せない事実こそが、ZAIAの正当性を示す証になってしまう。

人間側がヒューマギアに対して悪意を持って接する者が多いのは、そうしないと視聴者がヒューマギアの問題を注視して人間側に肩入れしてしまうため。
これは以前のお仕事勝負解説でも掘り下げて書いている。

そして便利な道具を得る程、人は悪意に走る。
メルカリやAmazonで個人の出品が簡単になると、悪質な転売屋が増えた。ホントに増えた。モリモリ増えた。
技術を得た悪意代表が1000%社長なわけだ。

他にも、人間はよくわからないものを拒絶する傾向にある。
ヒューマギアは人型の万能便利ロボットだが、現代社会ではスマホやタブレット端末を使いこなせない人はたくさんいる。

ヒューマギアはどう見てもそれらより更に高価で高機能。流通も一般家庭ではなく企業が主体だろう。
その企業でも、声優編の社長みたいに認知度が低いケースもある。
未だ進出に至っていない業界もあった。

視聴者が考えるほど、恐らくヒューマギアは広く普及に至ってない。
それはかつてのデイブレイク事件で、実験都市が崩壊して衛星打ち上げに一度失敗している事実が響いていると思われる。

便利だからって問題が多ければ普及は進まない。
それは現実でも、政府主導でキャッシュレス化推進しないとクレジットカードが全然普及しなかったのと同じだ。

大々的な普及は病院など一部施設だけで、暴走の危険性により我々視聴者が思っている程進んでいない。
そのため声優業界など新規参入の企業が存在している(導入した社長は飛電インテリジェンスについての認知もかなり薄かった)。

少なくとも雇用問題が未だ深刻化には至っておらず、法規制がかかってない程度の普及率なのは確かだ。
例えばガードマンのような耐久性を重要視される業界や、特に専門知識や作業に精密性が要求される職業。介護など精神負担が大きく人手不足の業界中心に広がっているなら雇用問題は発生しにくいだろう。
より広く広めるには様々な課題が残ったままであり、選挙勝負では実験都市を再開発するニュースも出ている。
(どちらにせよ根本的にヒューマギアの普及状況がほとんど出てない状態で、お仕事勝負や選挙戦をすること自体問題なのは間違いない)

それでもヒューマギアそのものは画期的であるため、社会への影響はどデカい。
ハッキングによる暴走テロ被害で信用はガタ落ち中である。
主犯格である滅亡迅雷.netは社会的に見ればこれまた不透明な組織で、壊滅させても暴走事故は事実として止まらない。

新型コロナでも情報が錯綜して混乱するのが現実の情報化社会だ。
それより遥かに大規模な事件が連続しているゼロワンの世界が、政府や飛電の陰謀論とか的外れな情報を叫ぶ者、それらを利用して悪事を働く者で大混乱になってないわけがない。
そして、これらの問題で真っ先に責任追及されるのはやっぱり飛電インテリジェンスである。

そう考えると、世間一般から見たヒューマギアはよくわからないけどヤベーイ物であり、飛電はそんなもん作り出して混乱を収められない諸悪の根源だ。
一般市民から見た諸悪の根源は絶望迅雷.netでも、根本は彼らもヒューマギアであるため、やっぱり回り回って制作した飛電への不信感が高まるのは当然だろう。

そんな感じで、細かなピースを拾い集めてはめ込んでいくと、ゼロワン世界の情勢はなんとなく見えてくる。
だが、それでもなんとなくってレベルで、正直情報が断片的過ぎてこんなんわかるか! ってのが本音だ。
とはいえ、これを本格的にやろうとするとシン・ゴジラ級の複雑さや綿密さを要求される。そんな社会をニチアサの枠で描くのが難しいのはわかる。

そもそもドラマでは世界観を形にする時は『人』を通じて社会を描くケースが多く、仮面ライダーにおいても例外ではない。
これが最も上手かったライダー作品は間違いなくクウガだ。
突如現れた相互理解のできないグロンギが殺戮を繰り返す中で社会の変化を、人々の反応を使って描いている。
グロンギの被害者になった家族だけでなく、直接被害はないがこの時代に身籠った子供を産んでいいのか悩む女性。グロングの被害を巡って起きる人間関係の軋轢など、まさに人々の反応が社会を形作っていた。

正直なところ、現在までのゼロワンがクウガ程上手く人間を使い社会を描けているとは思わない。
それでも、そういう挑戦が随所になされているのは事実だ。
AIに作業を投げてしまい、仕事は楽になったが活力を失った漫画家は、AIで楽をすることと仕事を楽しむ本質的な違いを描いている。
俳優回では、わざわざ大和田氏を本人役で起用。そこでヒューマギアのテロリストに狙撃される衝撃の結末で、ゼロワン世界に起きた事件の重さを現実世界にリンクさせようと試みた。

序盤はそうやって人を通してヒューマギアの利便性や問題を可視化していた。
お仕事5番勝負は『勝負』で限定的な状況を作ってしまったため、昨今の情勢が全然見えてこない。
間に挟まった婚活編は面白かったけど、かなりネタに走っているため世情は把握できなかった。

そういった理由から、お仕事5番勝負はなんとなく見えているものから状況を整理するしかない。
お仕事勝負の人間は性格に問題のある者は多いが、根は悪人ではない検事や消防士も競うことを承諾して、冷たい態度を示していた。
その根幹にヒューマギアへの強い不信感があったとしても不思議ではない。

人の疑念はとても強い悪意になる。
ちょっとした情報からありもしない事実を妄想して、それがさても真実のように思い込む。
そうしてヒューマギアの問題や欠陥を炙り出してその存在を否定する。

『正義のためなら、人はどこまでも残酷になれるんだ』
平成ライダーが残した台詞で、ここまで現実を的確に抉る言葉を私は知らない。

悪意をぶつけられたヒューマギアは暴走して、あるいは暴走させられてレイダーに襲われる。
レイダーとは人間とヒューマギアを隔絶する不和の象徴だ。人間が高度AI社会の到来を否定する社会構造なのである。

その上で、ヒューマギア達は勝負にどういう結末をもたらしたか?

芸術家はAIに心を見出した。
敏腕営業マンは失っていた人のぬくもりを思い出した。
裁判では無実の人を助け出して、相対する検事は評価を大きく改めた。
消防対決では勝負の中で人の命を学び、立派に消防士の使命を果たした。

いずれの試合でも、ヒューマギアは失った信用を人々から取り戻している。試合に負けている時でも勝負には勝っていた。

そこまで考えると、最後が投票勝負になった理由もよくわかる。
四戦目までは個々の繋がりと信用を描いて、ラストは人間がヒューマギアを受け入れるのか否か。個だけではなく社会に対して結論を出させようとした。
つまりお仕事5番勝負とは人間の悪意こそがテーマであり、社会から見たヒューマギアと人間の関係を問う物語なのだ。

天津垓の行動を整理するとお仕事勝負の正しい全容が見える

次にもう一つの大きなモヤモヤ要因は言わずもがな、1000%社長ことで天津垓ある。
飛電側に不利な勝負を押し付け卑怯卑劣の限りを尽くす。あまりにわかりやすい悪役っぷりだ。

ただ、それはお仕事5番勝負を額面通りに受け取った場合での話。
お仕事勝負が今のゼロワン情勢を示す縮図だと前提に考えれば別の意図も見えてくる。

元々、衛星アークに悪意を植え付け、滅亡迅雷.netを生み出す切っ掛けを作った諸悪の根源こそ天津だ。
そして今度は人類とヒューマギアの対立構造を生み出し煽っている。

だが天津の指摘する欠点そのものは事実だ。
悪意に弱いヒューマギアのメンタルは滅亡迅雷が手を加えなくても、いつか大きな問題を起こすだろう。

だが、最初は無線変身だったマギアは、途中からZAIA側がベルト使っての強制変身となった。
これにより『ZAIA側の言ってることは理解できなくもないけど説得力がない』との批判が続出。これは私も最初はそう思った。

だけどこれは正しく言えば逆なのだ。
ヒューマギアの抱える問題は事実としてある。悪意に対して弱く敏感過ぎるのも、ZAIA側の仕込みではなく天然モノだ。

ヒューマギアの問題提議は天津が自作自演しているのではない。
天津はヒューマギアの抱える問題を利用して事態を煽っているのだ。

視聴者は或人視点で話を見ているので、単なる自作自演として捉えやすい。
そりゃあアークの暴走から全部天津のやった悪行だったら、全部が全部天津の仕業に見えてしまう。
多くの脳には『大体こいつのせいって考えればOK』なエイリアンが住み着いている!

そしてこの意識差が、お仕事5番勝負の本質的な面白さを理解しづらくしている大きな要因だと私は思う。
多分、少なくない視聴者はお仕事5番勝負が全国に報道されていることを忘れているか、あってもその認識が薄い。
(そもそもヒューマギアよりZAIAスペックが上だと売り込むことが最初の建前なので、報道していないとやる意味がない)
報道されているという事実が、すごく、ものスゴーク大事! ビルドがボトル二本で変身する理由と同じくらい大事!!

ド外道な手を平気で使いまくる天津が、初戦で不正を犯した立花を糾弾して勝負をやり直しにしたのは、目に見える不正はZAIA側のイメージダウンになると判断したためである。
視聴者に届かなければ何してもいい判断は、二戦目のレイダーによる家の破壊をあえて黙認している。

途中、メタルクラスタホッパーを使いこなされて以降、怒りや焦りからか自発的な悪行が増えた。それでも、基本スタンスはずっと一貫している。

消防士対決も最初は勝利を譲らない姿勢だったが、ZAIA側の不正が誤魔化し効かないと分かればアッサリ敗北を認めた。このことからも、天津はひたすら勝ちを目指すだけでなく、あるいはそれ以上に視聴者のイメージ優先している。

だが、お仕事5番勝負を見守る側の視点がほとんどない。
我々は、天津の悪行ムーブが具体的にどういう効果を生んでいるかわかりにくいので、目の前のお仕事勝負の展開ばかりに注目している。

市民の声や物の見方をお仕事勝負に出てくる人物や、一部の通常お仕事編に出てくる人々だけに限ってしまっているのが、ある意味最大のミスだと思う。
ゼロワン序盤からあれだけ色々な事件があって、現在のヒューマギア情勢が当時と同じなわけがない。
特にお仕事勝負開始後は、ZAIA側に都合の悪い部分はほとんどが隠蔽され、今もヒューマギアは暴走を続けている事実だけが着実に市民へと報道されているはずだ。

元を辿れば、お仕事5番勝負は天津が望み企画して飛電側に提案した。
敗北すれば買収計画が消し飛ぶリスクを背負ってでも勝負を仕掛ける理由がある。

天津にとってはZAIA勝利と、飛電買収の両方が成立することで成せる計画があるはずだ。
それが何かは、物語に出ているキーワードを整理すれば、完全ではなくてもある程度察せられるところまで来ていると思う。

まずはお仕事5番勝負で使われているZAIAスペック。
これは人間の脳を強化して、ヒューマギアに匹敵できるレベルまで向上できる。
その性能はお仕事勝負最初の二戦や、消防士対決でヒューマギアと連携を取った活躍からも証明済みだ。

ZAIA側のアイテムだったレイドライザーもこの一つ。
ZAIAスペックが処理機能の強化ならば、レイダーは身体強化である。
この二つは機能が明確に分けられていて、同時併用も可能だ。

最初のレイダーになった立花はZAIAスペックも装着しており、レイドライザー装着時に目が赤くなる描写もあった。
レイドライザー単体ではそういう描写がないため、あるいはレイドライザーにはZAIAスペックへの強制ハッキング機能が装備されている可能性もある。

三つ目が無線による強制マギア化とZAIAが入手したゼツメライザー。
これによってヒューマギアは人間が拒絶すればする程、暴走してしまう存在となっている。

そして最後は選挙勝負。
天津はこれまでも人間側の怒りや不安を煽ることで、市民のヒューマギア排斥思想を煽っている。
選挙勝負では、いつ暴走するかわからないヒューマギアに対して、正当防衛の手段としてレイダーの有能さをアピールした。

最後が選挙勝負なのは、ここまで天津がお仕事勝負で積み重ねてきた世論扇動を加味した上で、確実に勝てる勝負だったから。
市民がヒューマギアを危険だと判断して危害を加え始める。
そうすると悪意によってヒューマギアはマギア化。

そしてZAIAスペックとレイドライザーで人類はマギアを倒せる力を振るう。
一連の流れが着実に準備されていた。これは明らかな企業的アピールだ。

そしてZAIAが飛電に勝利すれば、ゼロワンや衛星ゼアがその手に渡る。
仮面ライダー兵器化とレイダーは何かしら計画的に繋がりがあるだろう。

これらがお仕事5番勝負の中で整えられてきた計画。
お仕事勝負が正しく機能していないのは、それ自体が単なる隠れ蓑だったから。

四十五才児、初変身はしゃぎ過ぎだよ。そんな能動的にゼロワン攻撃すると傷害罪で訴えられたら負けるから!
そもそもイズが悪行のどれかを撮影してたから詰むよ!
とかそういう細部のツッコミどころは各所にあった。
あったけど! お仕事5番勝負そのものにおける天津の行動はちゃんと全部意味がある。

キャラ付けはともかく、大量の伏線撒きとその綺麗な回収っぷりだけなら見事な立ち回りではないだろうか。
そして最終目的、天津が夢想する新時代の仮面ライダー神話。

天津垓に最終的な評価が下されるとすれば、それはライダー神話の形が露わになった時だろう。
そして十年後くらいには、天津垓もあれはあれで面白い悪役キャラだったと言われて、レジェンド出演したら皆テンション上げて1000%を連呼していると予想する。

サウザーの戦いはゼロワン情勢を俯瞰すると1000%面白くなる

レイダーが不和の象徴であるとすれば、不和の代表が仮面ライダーサウザーだ。
変身前の天津垓と異なり、サウザーは安定して格好いいライダーだと思っている。

滅に近い尖角的なデザインだがより激しく尖り、ゴールドカラーでボス仕様なデザイン。
金色も派手な金ピカにするのではなく、あえて少し黒を入れた暗い色合いがカリスマ性を演出している。
しかも二者間の敵対を煽っていながら、当人はプログライズキーとゼツメライズキーを同時使用の豪華さだ。

性能的に拡張性がないとの意見もあるけれど、これも本編をちゃんと見れば真逆であるとわかるだろう。
玩具のベルト仕様は確かに拡張性皆無だが、そちらに認識を引っ張られ過ぎている人もいるとのではないだろうか。

サウザーの場合サウザンドライバーは拡張性ではなくキー二本刺しによる桁外れな高出力が売りだ。
シャイニングホッパーの蹴りや銃撃に怯まず、滅の必殺技を受けてもそこまでの大ダメージになっていない。

そして拡張性は武器のサウザンドジャッカーに割り振っている。
直接キーを差し込む以外にも、戦う相手からキーのテクノロジー(データ)を抽出できる。
要するにデータのコピーで、一度手に入れた力はいつでも自在に扱っていた。

他のライダー達はキーを差し替えて都度能力を特化させているが、サウザーはそれよりもシームレスに切り替えられる。換装を排除した代わりに得た汎用性だ。
登場初期に吸収したキーがファルコンとウルフで、どちらも素直にすっ飛んでいく飛び道具なため差異がわかりにくくて、なんか同じようなもの繰り出す技みたいなイメージが定着してしまったのもあるかもしれない。

また、局所的に見ればのワンパターンと言われるサウザーの戦闘は、俯瞰して見るとゼロワン作品内の世界情勢とリンクしている。
サウザー登場時点ではまさに5番勝負の開始で、ZAIA側が二連勝と最も勢い付いていた。
当然販促面も大きいだろうけど、ここでサウザーが圧倒的な力を見せている。

続く三戦目では飛電側の反撃が始まった。
ここでプッツンした或人はアサルトシャイニングでサウザーに迫る力を発揮。
そしてメタルクラスタホッパーによって初の敗北となった。

お仕事5番勝負側も飛電初勝利だが、ゼツメライザーを使った暴走によるイメージダウン戦略の始まりでもあり、メタルクラスター自体がZAIA側の仕掛けだ。
敗北してボロボロになっても高笑いする元気があるのは、計画はあくまで予定通りに進行しているため。

次回予告で遂に逆襲されおったと思ったら、完全に予想外な流れで、視聴者をイライラさせる要素でもあったのも事実だろう。
だがお仕事5番勝負編というか、もっと大枠で見たZAIA編のボスキャラである。先に語ったようにお仕事5番勝負が壮大な計画の流れによって進行していることを踏まえると、流れ的には正しいのだろうなと思う。流れ的には。
次話でメタルクラスタホッパーをコントロールされ、今度こそ完璧な敗北を喫し、ようやく溜飲を下げることができた。

そしてサウザーはメタルクラスタ登場からが特に面白い。
いつもの流れだと、新ライダーが登場すれば前ライダーは噛ませ犬になってしまう。
けれどサウザーは持っていた隠し玉を発動させて、まさかの実力でメタルクラスタホッパー撃破をなし得た。

内容も歴代キー集合技。それ主人公サイドのやる技だよね!?
ここまで悪辣さを全面に押し出してきた中での不意打ちで映像以外でも展開的な面白さがあった。
またサウザーが勝利するフラストレーションが溜まる展開の中で、面白い工夫を入れてきたなと思う。

加えて、メタルクラスタがトンデモアーマーにより次元が違う強さを発揮したが、それでも歴代プログライズキーの力を結集すればそれ以上の力を出せる。
これは天津がプログライズキーのデータを収集する意図とも繋がっており、ランペイジバルカン登場前の伏線としても機能している。
何より、これによってメタルクラスタがコントール可能になっても、サウザーはギリギリ型落ちした噛ませ犬にならない。敵としての威厳はキープしたままだ。

それだけでなく、復活した滅亡迅雷.netが戦線に復帰して混乱が加速していく。
ここでもバーニングファルコンと互角の戦い。その後の滅ともまさかの互角だった。
両方の戦いにおいて、サウザーは全開で出し尽くしている感じではなく、敵の必殺技でも倒しきれない堅牢な装甲も相変わらず。
天津にとって滅や迅は動かれすぎると厄介だが、ある程度の範疇ならヒューマギア排斥運動の後押しにもなるだろう。

逆にアサルトウルフはフルボッコでどんどん格落ちしていくのだけど……。仮面ライダー雷ごと彼の活躍が遠い記憶になっていく。
戦果らしい戦果は洗脳で操られた時と、暴れるメタルクラスタから単身でベルト剥ぎ取ったくらいしかない。やっぱりゴリラじゃねえか!

そしてここまでで復活した滅亡迅雷組と或人は直接対決をしていない。
これは主人公が或人でも、物語の中心に立ち展開を回しているのは天津垓である事実を示している。

戦闘能力の基準ですらサウザーなのだ。
おかけでメタルクラスタホッパーが一人勝ちして皆を置いてけぼりにする展開になっていない。
一人戦力外になっていたバルカンの強化、ランペイジを強調できる展開にもなっている。

ただでさえストレス強い展開。その最後のカタルシスポイントとして、これまで良いところのなかったバルカンがキー全部乗せのランペイジバルカンに進化。レイダーとサウザーを問答無用にぶっ飛ばす。
洗脳を除けば立場的なしがらみのなく、そのしがらみもキーのごとく力尽くで破壊する不和が叩き潰す流れで締めた。まさにゴリラ技の所業。

サウザーはライダーと強化が連続する平成二期以降において、初めて全体の能力バランスを崩壊させず、混沌としていくゼロワン情勢をコントールすることに成功している。
何気にこれは初の快挙ではないだろうか。
もし中身が四十五才児でなかったら、仮面ライダーサウザーは今より1000%称賛されているはずだ!

お仕事勝負で或人が見出した大事な成長

お仕事5番勝負の見どころを語ろうとすると、どうしてもまずは話の構造を解説せねばならない。
そうなると基盤を構成する人物、天津垓に話が集中する。

これを語り終えてやっと触れられるのが、我らが主人公、飛電或人だ!
長かった。ここにたどり着くまで何度も本編見返してチェックの作業もしていたので、ホント書いてて長かったよ!

天津垓は舞台装置だが、ゼロワンはあくまで或人の成長物語であるのは変わらない。
滅亡迅雷.netとの戦いでは、仮面ライダーとして成長はできても、飛電インテリジェンス社長としての進歩は何もなかった。
そりゃあテロリストと戦いながらヒューマギアの仕事を見て回るだけで、他の社員との交流とかほぼないのだから当然である。

そこで現れたのはもう一人の社長でライダー、天津垓だ。正確には日本支社長だけどな!
お見合い時の経歴書だと、ZAIAの前にも起業経験がありM&AしてZAIA入りしたらしいので、社長としての経歴と実力は本物だ。

天津の思想は或人と正反対。予め計画もしっかりと錬られた上で、ゼロワンではなく飛電インテリジェンスを潰しにきた。
お仕事5番勝負は戦闘をストーリーに絡めにくいとの批判もちょくちょく聞いたが、或人の戦いは、人ではなく会社とヒューマギアを守るに移行している。

社長として成長するための戦いなのだから、これはいつかこうなる必要があったと私は考えている。
お仕事勝負の中でも或人の仕事は横槍入れてくる連中と戦いながら、後はヒューマギア達の仕事を見守ること。
社員達が会社を信頼して安全に仕事ができる環境作りなのだ。
そう考えれば、むしろ序盤より上手く社員の使命と仮面ライダーの戦いを絡めている。

お仕事勝負に入ってから、或人の意識も明確に変化が起きている。
最初から或人はヒューマギアを人類の良きパートナーとして見ていたが、それは家族や友人のような感覚に近かった。
始まりが父親だったのでこれは自然なことだと思うが、それだけが全面に出すぎていて社長要素がとても薄い。
(番組としても商品開設から始まったように、ヒューマギアは商品として扱われていた)

しかしお仕事勝負が始まり、或人は人間の悪意に晒されるヒューマギアを何度も見た。
そしてヒューマギアを破壊するのではなく、守るための戦いが増えていく。

自分が最も彼らを信じて守らねばならないと。彼の覚悟は人類の守護者ではなく、社長としてのそれになった。
『まず自分達がヒューマギアを信じなければ他の皆も信じてくれない』と選挙勝負にて断言した姿には、お仕事勝負を通じて得た或人の強い決意が窺える。

お仕事5番勝負編における或人は、一言で表すなら難破船だ。悪意の荒波に飲まれボロボロになって、岸の見えない海を漂い続ける。
彼の傍にはいつもイズが寄り添っていたが、逆に言えばイズしかいなかった。

そんな中で、或人は自分と違う社長の姿を見た。
傲慢で冷酷で、ヒューマギアどころか社員や仲間さえ道具のように扱う男。
こうであってはいけない。
自分は信じなければ。ヒューマギアは人類のパートナーであると。

悪意がヒューマギアを狂わせ壊していく姿を何度も見ながら、それでも彼はヒューマギアと共に歩む未来を信じて進み続けた。
やがてその悪意は或人の肉体も蝕んだ。

どれだけ素晴らしい技術も、使い方次第で善にも悪にもなる。
暴走するメタルクラスタホッパーは具現化だ。

何度も悪意に纏わり付かれ身も心も疲弊していく或人を救ったのは、彼が信じて守ってきたヒューマギア達。
或人の努力と戦いは、ちゃんとヒューマギアには届いていた。

会社は親として子である社員を守る。
そして社員は自分達を導いてくれる親を守る。

悪意を打ち砕いた善意の力。
それは或人がヒーローとしてだけでなく、社長として成長した証。

これまでは一度暴走してしまうと『商品』として壊すしかなかったが、メタルクラスタの事件を経て遂に『社員』として守る力を手に入れた。
人とヒューマギアは良きパートナーになれる。その信念が一つの形になったのだ。

たとえ社長の座を奪われても、彼の心にある覚悟までは奪えない。
不和と悪意で人々を蝕む天津垓を止められるのはただ一人、調和と善意で皆を救う飛電或人だ。