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高度AI社会で人間の創作は消えるのか ~仮面ライダーゼロワンのリアリティ~

2022年9月3日

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AIのラーニングと著作権の問題

イラスト生成ツールとしてmimicが炎上した理由は、著作権侵害の問題だ。
特定のイラストレータの作品を集めてラーニングさせれば、その人を模倣したイラストが簡単に出力される。
これは盗作目的で使用する者からすれば、言わば簡易トレースイラスト製造機として機能してしまう。

この事実に忌避感を覚える人は少なからずおり、私もこの点は問題がないとは言い難い。
ただ、これはかなり感覚的で感情論も多分に含んでいる。

では、実際にmimicは法的にみて白なのか黒なのか。
まず前提としてmimicは『自分で制作したイラスト以外は使用してはならない』と規約にある。
本来ならこれを書いている時点でOKのはずなのだが、そもそも悪用する人間はそんな規約をまともに読まないか、堂々と無視するだろう。

これについてはmimic制作者が悪いというか、個人的には法整備の問題であると思う。
ゼロワンの世界観でも、ヒューマギアに関わる法整備はある程度なされていた。
言い換えるとAIの悪用は法で縛るくらいしっかりしないと防げない。

ただ、現実の法整備がAIに追いつくとは到底思えないのは、まあ多分大部分の人が同意見ではないかと思う。嫌な信頼度である。

ならば、現状の法律はどうなのだろうか。
一番重要な、イラストの解析に他人の著作物を使用することについての是非。意外に思われるかもしれないが、これは完全に『白』だ。
情報解析に必要な限りにおいては、著作物の利用は自由にできる。

また、この自由な利用は権利者の許可を必要としない。
つまり「私のイラストをAIの解析に使用するのは禁止です」といくら権利者が声高に叫んでも、それは一切何の意味もないのだ。
これは「私の作品を無断で引用するのは禁止です」と言うのと同じようなものである。

ただし、それは完全な自由を意味しない。
実際にmimicで他人のイラストを解析して、新たなイラストを生成したとしよう。
生成イラストと解析元イラストの類似性が強い場合、無許可で頒布したり販売したりしたら、それは著作権侵害になる。
どのみちmimicは、マネーロンダリングならぬイラストロンダリングみたいな使い方はできないのだ。

なら逆に、AIが生成したイラストには著作権が発生するのだろうか。
ここはかなり曖昧模糊としている。

重要なのは、AIが勝手に生成したのか、人間が意図的に『AI君、こういう風なイラストを作ってねと命令した』かが重要になる。

例えば、簡単なキーワードを指定してボタン一つで自動的にイラストを生成するなら、どのようなイラストができるかはかなり博打的であり、そこに人間の意図はあまり介在しない。
その場合はイラストに対する著作権はほぼ発生しないと言っていい。

しかし長くて複雑なまるで呪文のような命令文で生成した場合は、そこに人間による生成技術が認められる可能性がある。
そうなればその呪文に対して創作性が生じて、著作権が認められるかもしれない。
ただし、現在の日本の法律だとこの基準はかなりあやふやで、明確なラインは存在しないだろうとは思う。

さて、統合して考えるとmimicは制作者が停止させたものの、現段階でみても法的にはかなり白寄りのツールである。
また、mimicで出力したイラストに著作権が生じる可能性は低いと思われる。

とはいえ、これと倫理的な忌避感は別問題なので、mimic否定派と肯定派は平行線の争いを繰り広げることになる。
正直なところ倫理的な問題を完全にクリアするのはほぼ不可能だ。

そしてmimicがいくら自重しても、他の類似サービスは今後確実に現れる。
それこそ外国製のツールだと、著作権意識はもっと緩々で、倫理観ガン無視な扱い方を許容するサービスを提供しても不思議はないのだ。

倫理的に『あれは駄目、これはこんなリスクがあるよ』とガチガチに固め過ぎると、国内AIの発展を阻害して、技術的にどんどん遅延していくことになる。
実は皆が守るべきと思っているはずのイラストレータすら、回り回って大損するかもしれず、単に皆で一緒に不幸になっているだけだ。

個人的には無料版をやめて最初から有償オンリーのサービスにすれば、ルールをまともに読まずに違反するタイプはまず使用しない。
そして解析に使ったイラストを自動で公開する仕組みにすれば、イラストの類似性による著作権違反の指摘はかなり容易に判別可能になる。

この辺が現実的な落とし所ではないかなと思う。

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