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仮面ライダーゼロワン 13話感想 過去(ワズ)が繋いだ現在(イズ)への意思

2019年12月1日

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仮面ライダーゼロワン 13話『ワタシの仕事は社長秘書

ゼミ生の皆様こんにちは、語屋アヤ(@ridertwsibu)です。

今週は探偵編の後編……というよりはワズ編もしくはシャイニングホッパー登場編でした。
脚本は引き続き三条陸氏。

今回は前回よりも三条陸脚本感が強い文句なしの神回だった! 超満足! って感じでした。

一緒に祭の続きから、最高の血祭りだ! の台詞回しがとても『仮面ライダーW』を思い出します。
これをもっと正義的な内容での台詞回しにすると左翔太郎にもなるぞ!

ワズが想いをイズに託して逝く流れもすごい『W』感があります。
前回と今回に流れる『W』の文脈は前回解説しました。

http://kamen-rider.info/01-12/

ワズの退場は惜しいですが、これはまあ予想できたこと。
Twitterでも先週しれっと呟いてました。

ぶっちゃけワズの存在は役割的な意味で或人やイズに距離が近い。
そりゃなんたって前秘書ですからね。

その上有能過ぎるとなると、これはもうこの回で退場するか、準レギュラーになるしかない。
しかもイズとの兄妹機であることがやたらと強調されていたので、そりゃあこの結末は避けられません。

とはいえ、これまでとは明らかに違った退場方法。
これはむしろ悲観するより、脚本を褒め称えるべきだと言う他ない。
個人的にゼロワン一話に匹敵する神回だったパワーアップ回を存分に語っていきます!

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三条陸脚本が魅せるバディドラマ

今回の後編では探偵要素が一気に薄れた代わりに、より人間ドラマ側に話が振られていた。
そもそも探偵編の物語としては前回ほとんどやりきっている。ワズのキャラ立ちは前回だけで十分なほど描かれていたので、これは全く問題ない。

三条陸=仮面ライダーWだと言い切ってしまうのは、それはそれで語弊がある。
けれど、バディ物としてのドラマ要素が後編では随所にちりばめられていた。
これは大小含め主に三つ。

一つは不破と唯阿。
唯阿は現在、どっちつかずで微妙な立ち位置。
イズとワズに銃を突きつけた姿からも、どれだけ神経尖らせているかがよくわかる。

けれど、唯阿には唯阿の個人としての意思もあった。
それが滅亡迅雷.netが共闘持ちかけた時に、不破よりも先にエイムズショットライザーを撃った時の台詞。

「お前の答えはこれだろ不破!」

自然に出てきたこの台詞は、最初段階ではまず出なかった相手への応用を必要としない問いかけだ。
お前ならこう動くだろ。私も賛成だ。そういう意味を行動と短い言葉だけで示す。
微妙な距離感を保ったまま、けれど息の合ったバディ感が二人に芽生えだしているのを感じさせた。

二つ目は前社長の是之助とワズだ。
まるで走馬灯のように再生された二人の思い出。

是之助はワズを秘書でありながら友と呼んだ
それだけでも並々ならぬ関係を感じさせている。
そして眠りに付かせる行為は、さらっと出てきているがあまり人道的とは言い難いだろう。

相手の自由意志を奪い動けなくして、次にいつ目覚めるかもハッキリしない。
人間とは構造的に違うとはいえ、意志のある者にとってあまり快諾できる行為じゃないのは容易に想像できる。
しかも、或人が社長就任までの筋書きは、恐らくこの時にはもうできていたはず。

ならば、このシーンは是之助とワズ、互いにとって終生の別れ際。その時の会話なのだ。
けれどワズはそれを受け入れ、次に目覚めた時には最も敬愛する人物は既に遠い世界へ旅立っていた。
それでも、否だからこそ、ワズは全力で自分の使命を全うする。
描写こそ少ないものの、この二人もまた、最高のコンビだった。

そして最後は当然、或人とイズ。
或人は祖父である前社長、是之助に飛電インテリジェンスの社長とゼロワンを託された。
それと同じく、イズは今回兄のワズから自分の在り方を学んだ。そしてシャイニングホッパーキーと共にヒューマギアの未来を託された。

或人とイズの二人共が先人の想いを引き継ぎ、二人の道を拓いていく
二人の関係というか、背負ったものはこれで等しくなった。
それを象徴するシーンこそ、イズが或人にキーを投げ渡す場面。

イズは社長秘書として自分の仕事を果たして、或人はそれを受け取って社長の使命を果たす。

三者三様のバディ関係を一話で見事に描ききった。これだけでも十分に素晴らしい人間味ある脚本だと思う。

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シャイニングホッパーの戦闘能力設定はここが見所!

シャイニングホッパーが登場するも、ワズの嫌な予感が大当たりして、ドードーとの戦いには案外アッサリと敗北。
その理由は或人の成長が予想以上で、性能計算が狂ってしまったため。

「伸びしろだけはちょっとしたもんだぜ」

と、ヒューマギア相手に人間の成長で対抗する或人の台詞と在り方は面白味があった。
人の成長は機械のラーニングと違い約束された確実なものではないけれど、それ故に予想を超えた成果を発揮する時もある

「俺を越えられるのは、ただ一人。俺だ!」

なお、お笑いの伸びしろはない模様。

というわけで一話で二回目の変身。二回目はただのバンクではなく演出が追加されていて、より一層強化フォーム登場感が増した!

戦闘能力が最善パターンの瞬間的な算出。
未来的でゼロワンらしい。

そして算出される未来予測位置が出現して、そこに攻撃が当てはまっていく演出とモーションもSF要素がカッチリ枠にハマる演出だ。
しかも一度敗北することで、これがただ機械の発展だけでなく、ちゃんと或人の成長も関わっているとわかる。

今の或人が出せる最善の力を、シャイニングホッパーのシステムが最高の形で現実に発揮させていく。
その結果、180%が500%に達した!

っていやおい待てよ社長!
お前はただ「自分は1000%だけどな!」アピールしたいだけだろ!
しかもサウザーの名前出しちゃって、そもそもお前はなんで普通に現場近くで直接見学しているのか。

話を戻して、ここからは結局シャイニングホッパーって力って何なのか、何故反動があるのかよくわからなかった人向けの解説。

シャイニングホッパーの能力はもっと噛み砕くと『変身者の潜在能力を強制的に引き出せる』システムだ。
最初に変身では想定していたより或人本人の能力が向上していて、システム側が或人の潜在能力を引き出しきれていなかった。

要は強化フォームのスペックを或人側が上回ってしまったと言える。
右と左のバランスが合わない仮面ライダーWみたいなものだ。

その結果、想定していた出力が出ず、ドードーにラーニングされてしまい敗北。
なので過去の戦闘データをもう一度算出し直して、今度こそシャイニングホッパーの性能を最大限発揮できるよう再調整した。

ただし潜在能力を引き出すとは、同時に肉体の限界を無理やり引っ張り出すのと同義だ。
その代償としてバックファイア(肉体的な高負荷)が生じる。

興味深いのは負担の原理がこれまでになかったタイプであること。
精神には関与しないのでプトティラやハザードのような暴走型ではない。単に負荷がかかって身体がボロボロになるのゲイツリバイブ式とも少し違う。

強敵が相手であるほど、なおのこと対抗するために或人のポテンシャルは無理に引き出されてしまうためバックファイアも過多になっていく。
さらっとされた説明の割には、かなり危険なシステムだ。

ドードーを倒したことで、ここから戦いは新たな局面へと入っていく。
その中で酷使されるシャイニングホッパーの負荷が或人にどのような影響を与えるかも、強化フォーム的に見所の一つだ。

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過去(ワズ)が繋げた現在(イズ)への希望

ワズがシャイニングホッパーの欠陥を見抜いたのは純粋な直感だった。
なので、前回シャイニングホッパーに無事変身できた時には、自分の杞憂だったと嬉しそうに拍手している。
そしてマンモスを選んだのは、逃亡まで視野に入れての計算だったこともわかる。本当にめっちゃくちゃ有能だよ!

直感という言葉は勘みたいな意味として扱われやすいが、事実は少し違う。
このケースにおけるワズの直感とは、過去の経験から似た事象の記憶を朧気ながらに発掘すること。
もしくは類推する記憶から、不完全な形でこれから起きることを予感として形作る。

これは探偵として数多くの経験を持ち、しかも不定の記憶を意図してではなく無意識の内に統合して初めて可能となる。
この無意識こそ人が人たる所以、シンギュラリティに達した証明なのだ。

イズとワズにはバックアップを保管するシステムがない。バックアップが取れないってPCに例えると、外部から情報は取得できるが、自分の情報は一切外部に保存できない状態に等しい。
もはや防犯対策を通り越してただの構造的欠陥としか思えないよ?

ただし滅亡迅雷.netにこれだけバカスカとハッキングされているのを見ると、行動として正解に見えてしまうから困る。

そのためイズは、自分の記憶をデータをコピーではなく直接抽出する方法を選んだ。
コピー・アンド・ペーストではなくカット・アンド・ムーブ。これは事実上の死と変わらない。

ワズはそんなイズの行動を読んで、自分が身代わりとなった。
ここで疑問なのはワズの有している戦闘データはかなり少ないことだ。
とはいえ、ここで状況を整理してみよう。

戦闘データのうち、フォームチェンジに関するものはフライングファルコン以外揃っている。
そもそもファルコンキーは早々に盗まれたため、情報としては古いものしかなく、収集する意味がない。
ならば足りないのはライジングホッパーの戦闘データだけ

ワズは先程ライジングホッパーの戦闘を記録していた。
そして付け加えると必要なのは最新化された戦闘データなので、古い蓄積情報はそこまで重要ではない。
イズは社長秘書として戦闘の大部分を見てきたが、実のところそれらの大半はプログライズキーに記録されているか、重要度は低いものだろう。

この辺り、尺の問題で説明不足ではあると思ったが、最も直近の戦闘を記録したワズのデータが有れば事足りる理論はちゃんと成立している。

イズとワズの兄妹が行動の果てに至ったのは自己犠牲だった。
これはどちらも根本の意思は同じ、自分の使命を果たすことにある。

イズは自分のミスによって社長の或人が窮地に陥ってしまった事実にショックを受けていた。
その上でシャイニングホッパーの欠陥を見つけ出して、完成させるために自分の記録を抜き出すことを決意する。
言わば贖罪が根底にある自己犠牲

ワズはかつて自分を友と呼んでくれた前社長に報いるため。
そして託された願い、現社長の或人と自分の妹イズを守ること。その使命を果たすため、ワズは自らイズの身代わりとなった。
最も敬愛する恩人との約束を守り、そして長い間眠って過去の存在になっていた旧式ヒューマギア。
彼は先代の意思を、新たな世代へと繋いだ。未来へと託す自己犠牲

イズは使命のためここで終わることを良しとした。
対してワズは使命のため過去の意思を現在に託すことを良しとした。

終わらなったイズは兄への敬意と意思を抱き、社長秘書として或人に過去(ワズ)から繋いだ希望を届けた。

それは学びと願いだ。
イズはもうリセットすることすらできない兄の死を看取った。
ヒューマギアの死を学び、けれどそれを暗いものとはしない。

これまでの操られ壊されるしかなかったヒューマギアとは違う。
ワズは自分の意思で命よりも未来を選び取った。
それは悲劇だが勇気ある行動。託された意思は死んでいない。新たなプログライズキーとなり、決してリセットできない形として残っている。

兄の死を、ヒューマギと人間の明るい未来を拓く願いとして或人へと託した。
その結果が打倒ドードーの達成なのだが、それだけではない。

それが祭田ゼット5号の存在だ。
かつて死なず生き残ったヒューマギアにDr.オミゴトがいた。
彼は襲われても自我でコントロールから逃れており、自力で生還している。

祭田ゼットは或人が戦いドードーを倒さなければ生き残ることは決してなかった。
彼は初めて或人の手によって直接救われたヒューマギアだ。
狙われたヒューマギアは助られず、或人が自分の手で壊すしかない。その流れが明確に変わった。これは託された願いの結果だ。

(ワズ)はイズに死と願いの意思を学ばせ、過去(ワズ)は未来を変える大切な希望となった。
そこから学び次に繋げ、そうして新たな未来が創られていく。
死とは避けられない別れであるけれど、そこを終点にするかは受取り手次第なのだ。

これもまた、ヒューマギアが到達した命の在り方を問う物語。

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